今回紹介する本は、光文社文庫編集部・編『Jミステリー2022 SPRING』(光文社文庫)です。
昨年12月にした旅のお供として持参した本のうちの一冊になります。
6名の作家さんによるアンソロジー作品となっています。
一番の目当ては東野圭吾さんでしたが、どの作家さんの作品も面白く満足でした。
東野圭吾さんの作品で作中、登場人物に
「ミステリ小説としてはB級だが、十分に考えられることだ」
(p59)
と語らせているところがあり、小説内で出されたトリック案にB級というのはミステリ作家としてのプライドというものを感じました。
一番印象に残ったのは知念実希人さんの『黒猫と薔薇の折り紙』でした。
冒頭の語り手が猫から始まるあたり、夏目漱石の『吾輩は猫である』を思い浮かびました。
タイトルにもなっている薔薇の折り紙が重要な意味をもつのですが、折っているのをみたり、もらったりすることがあるのでイメージがしやすかったのも印象に残った要因かと思われます。
その作家さんしか書けないものというものがあるはずであり、医学的な知見を活かした知念さんだからこそ書ける小説なのかなと感じました。
ちなみに、ミステリーは素直に詮索しすぎることなく、ストーリーに乗っかって読むのをおすすめします。
そのほうがミステリーの謎が解明されたときの驚きを素直に味わうことができるように思います。
まず作風を味わいたいときにはやはりアンソロジーがおすすめです。
ぜひ、手に取ってみてください。