今回紹介する本は、鴻上尚史さんの『孤独と不安のレッスン』(だいわ文庫)です。
再読をしました。
前回読んだときよりも深く読めたような気がしています。
孤独や不安というものはネガティブなイメージとして使われることが多いです。
そのようなことはなく、上手に付き合っていくことが大切だと感じました。
そもそもひとりでいることは悲しいことでも苦しいことでもありません。
ただ、それをみじめだと思う気持ちが自分を苦しめてしまうのです。
学生時代はなんとなく集団行動をしていました。
教室を移動するときもひとりではなく数人で移動していました。
それ自体に意味があったとは思いません。
ひとりで移動をしても何もなかったでしょう。
そこで恐れていたのは思われることのないであろう、ひとりで行動しているというものだったのです。
それの延長線上に世間体というものがあります。
この世間体というものが欧米における神の存在となります。
神との対話は自分との会話で成り立ちますが、世間体だとそうもいきません。
今では、個性を重んじる風潮も広がっています。
ただ、日本にとって周りの目というのは避けられないものでもあります。
バランスというものが大切になってきます。
生きていくうえでは孤独や不安を避けることはできません。
鴻上さんは演劇関連で大学の講師も務めています。
歳を重ねても不安や孤独から避けることはできないものだと言います。
むしろ増えていくものだと述べています。
それならば若いうちから訓練しておくべきであると続きます。
その手っ取り早い方法がひとり暮らしをするというものでした。
いやでもひとりの時間が増えます。
家に帰っても誰かが待っていることはありません。
その環境下で過ごすことが第一歩であるということです。
私は元々ひとりの時間が好きなのでひとり暮らしをはじめて淋しさを感じることはありませんでした。
でも、ネットを通してつながることで、癒しを得ていることもあったのかと思います。
生きていると出てくるのがやはり人間関係です。
『他人』と『他者』が出てきます。
関係のない人間関係が他人であり、心の中に深く入り込んだ人間関係を『他者』と呼びます。
わかりやすいところで言うと親、兄弟といった家族は他者になります。
他人の場合はどうなろうと知ったことではないかもしれません。
しかし、他者に対してうまく付き合えることが自分の不安ともうまく付き合えることにつながっていきます。
自分にとって大切な人と向き合うことが何より大切だと学びました。
その大切な人の基準が興味深かったです。
それは、
あなたがおみやげを忘れても、許して、支えてくれる人を2人、持つことが目標です。
鴻上尚史『孤独と不安のレッスン』(だいわ文庫)(p212)
とありました。
多くの場合、1人は家族になるようです。
おみやげをあげなければいけないという関係性は「依存」であると感じました。
忘れても許してくれるというのは信頼です。
そういう信頼関係を持てる人をつくっていきたいです。
友達が多ければいいというのも一種の幻想のようなものです。
自分自身の孤独や不安と向き合うことで成長することができます。
その中で他者と向き合い信頼関係を築くことができればこのうえない幸せへとつながっていくと感じました。