こんにちは、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)です。
「本を語る、人と繋がる」をテーマに札幌ゼロ読書会の運営をしています。
また、ブログ、SNSやポッドキャスト等の発信活動を通して、本の魅力や読書の素晴らしさを伝えています。
今回紹介する本は、岡田悠『0メートルの旅ー日常を引き剥がす16の物語』(ダイヤモンド社)です。
この本の編集担当の今野さんのXをフォローしています。
重版が決まったタイミングで、岡田さんがそこにいたるまでの経緯の記事にしており拝見しました。
それを読み、興味をもち購入しました。
私も旅をすることが好きです。
歴史的な地を回るのも、おいしいものを食べるのも、誰かと会うのも旅ならではの経験だと思っています。
海外にはまだ行ったことがないので、いつか行ってみたいなと思います。
この本には副題にもある通り16の物語が載っています。
遠い場所への旅からだんだん近くなっていきます。
新婚旅行で行かれた南極に始まり、最後は自宅という0メートルの場所での話で締め括られます。
結構危険が多いのではないかと思われる場所にも体当たりで行っている様子がおもしろかったです。
岡田さんの性格と思いますが、無駄とも言えるくらい几帳面でしっかりと事を遂行する様子も楽しみました。
特に印象に残ったのは、最後の「0メートルの旅」すなわち自宅です。
コロナ禍により、外出が思うようにできなくなりエアロバイクを購入されました。
ただ、漕ぐだけではつまらないとGoogleマップと連動して漕いだ分だけ景色が連動して変わるようにしました。
SNSで思い出の地を募集すると様々なものがありました。
それらへの思いを感じながら岡田さんは自宅でエアロバイクを漕ぎながら、Googleマップの映像を見て想いに馳せるのです。
0メートルの旅を通して岡田さんは旅そのものについてこう定義します。
旅とは、そういう定まった日常を引き剥がして、どこか違う瞬間へと自分を連れていくこと。
そしてより鮮明になった日常へと、また回帰していくことだ。
岡田悠『0メートルの旅ー日常を引き剥がす16の物語』(ダイヤモンド社)(p281)
旅に出たあとというのは日常の見え方が異なります。
これは何も距離に比例するとは限りません。
日常をどう見るかによって過ごし方や感じ方は大きく異なるでしょう。
自分の地元の観光地を聞かれて「何もない」と卑下することよくあると思います。
しかし、実際には観光に訪れている人はいるはずで、何かがあるはずです。
その何かを大切にすることこそが旅の本質につながるのではないかと思いました。
岡田さんは旅の正体をこう締めくくっています。
どこへ行こうとも、予定も目的も固定概念もすべて吹っ飛ばして、いま目の前にある0メートルを愛すること。
それが旅の正体ではないか。
岡田悠『0メートルの旅ー日常を引き剥がす16の物語』(ダイヤモンド社)(p285)
旅が好きな人には旅行記として楽しむことができますが、出不精の人にも旅とは何かを考えるきっかけになる本だと感じました。