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今回紹介する本は、ダニエル・キイスさん(小尾芙佐さん訳)『アルジャーノンに花束を』(早川書房 ダニエル・キイス文庫)です。
職場の同僚が読んでいると聞き、数十年ぶりに再読しました。
近年では、ヨルシカというバンドが「アルジャーノン」という曲を出しており、その影響もあってか若い世代にも読まれているようです。
物語の主人公はパン屋で働く青年、チャーリイ・ゴードンです。
32歳ですが、IQはわずか70ほどしかありません。
ある時、大学の教授が彼の知能を向上させる手術を提案します。
その手記という形式で物語が進行していきます。
手術の実験に使用されたネズミの名前がアルジャーノンです。
手術を終えると、彼の生活は一変します。
読者として感じるのは、彼の文章が一変することです。
翻訳者の小尾さんが苦労したであろうその訳文には、彼の内面の変化が如実に表れています。
チャーリイは以前は見えなかったものが見えるようになりますが、急速な知的成長に心が追いつかない部分もあります。
また、過去の出来事を新たな視点で俯瞰することで、新たな考えが生まれることもありました。
彼のIQは185に上昇し、周囲とのコミュニケーションに問題を抱えるようにもなります。
知識欲は変わらず、あらゆる分野に興味を示します。
ついには大学の教授をも凌駕するレベルの知識を身につけ、周囲を圧倒します。
しかし、知能が向上したことが本当に幸せだったのか疑問が残ります。
彼自身は賢くなりたいと願っていましたが、周囲の人々は彼に距離を置くようになります。
また、過去には気にしなかったことに苦しみを覚えることもありました。
アルジャーノンとチャーリイに施された手術は実験的なものでした。
ある日、アルジャーノンに退行が現れ、様子の変化が見られます。
チャーリイはその研究成果を「アルジャーノン・ゴードン効果」と名付け、自らの運命を予見します。
そこから、この物語は一気に読み進める手が止まらないほど魅力的でした。
人は皆、幸せになりたいと願うでしょう。
より知的に、より裕福になりたいと思うこともあります。
しかし、その変化が本当に幸せをもたらすかどうかは分かりません。
現在の状態が最も幸せなのかもしれません。
印象に残ったところを紹介します。
知能は人間に与えられた最高の資質のひとつですよ。
しかし知識を求める心が、愛情を求める心を排除してしまうことがあまりにおおいんです。
ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』(早川書房 ダニエル・キイス文庫)(p393)
生きていくうえで大切なことに気づかせてくれる、そのような小説でした。