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今回紹介する本は、小川仁志さんの『前向きに、あきらめる。 一歩踏み出すための哲学』(集英社クリエイティブ)です。
以前、岸見一郎さんの『ゆっくり学ぶ 人生が変わる知の作り方』(集英社クリエイティブ)を紹介しました。
そのブログ記事を読んでいただいた担当編集の方からご連絡をいただき、今回こちらの本を献本していただけることになりました。
著者である小川仁志さんはNHK Eテレ『世界の哲学者に人生相談』や『ロッチと子羊』に出演中ということで、テレビでご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれません。
そもそも哲学とはなんでしょうか?
小川さんはこう答えます。
わかっているようで実はよくわかっていなかった言葉について、ああでもないこうでもないと考え続けることで、その核心にあるものを探る営み
p3
としています。
その心の動きを見つめることで人間はよりよく生きていくことができます。
章立ては「あきらめる」「ためらう」「捨てる」といった一見ネガティブに思えるようなものが並んでいます。
果たしてこれらは本当にネガティブなだけなのでしょうか?
子どもの頃に描いていた夢の通りに今生きている人というのはまれだと思います。
あこがれていた職業についている人でもどこかでうまくいかないことはあったでしょうし、何かしらのところで妥協しているところはあるでしょう。
子どもの頃、夢見た職業や生活をすべての人が送っているということはなく、誰しもがどこかで「あきらめ」ているはずです。
しかし、これは決してネガティブなだけではありません。
あきらめるという言葉には「今は」という留保があります。
完全に「やめる」といったことではないというのがなるほどなと思いました。
わたしは病気が理由で大学を中退しました。
療養をしてまた大学受験をするという選択肢もありましたが、一般就労を目指し、大学進学の道をあきらめました。
それでも学ぶことはやめていない自覚はあります。
いったんあきらめました大学で学ぶことについて今でも調べることはありますし、今後の選択肢として持つようになりました。
本書の構成は少し特殊です。
それぞれの章の初めに導入のストーリーがあります。
登場人物が哲学悩み相談所の小川さんの元に訪れます。
そこで本の原稿の一章分が渡されます。
登場人物が読んでいる感覚でその原稿に目を通し、その後のストーリーへとつながっていきます。
哲学は結果だけ知っていれば良いということではないはずです。
むしろ結果を忘れてしまっても、その過程をしっかりと追いかけることが大切だと思っています。
同じように悩む人をストーリーで絡めていることでより身近に感じ、読みやすく工夫がされていました。
最後の章は「邂逅」です。
思いがけないめぐり逢いのことを言います。
あきらめて開き直ったことがきっかけとなって新たな出逢いを生むこともあります。
人生は何が起こるかわかりません。
挫折した経験がなければ今こうして生きていることもあるでしょうし、出会わなかった人もきっといるでしょう。
すべてをポジティブに受け入れることができなくても、あらゆる事柄に対して物事をフラットに見つめることは大切なのかなと感じました。
時として、前向きに、あきらめることで開ける道もあることを心に刻んでおこうと思います。