今回紹介する本は、『読むための理論ー文学・思想・批評』(世織書房)です。
読む本のジャンルのバランスを整えるようなことはしていませんが、半分くらいが小説であってほしいなと思います。
小説は言葉に対する感覚を磨くようなものであり、畑を耕す感覚です。
ここで言葉に対する感度を上げておくことで、他の文章を読んだときに心に入ってくる感性を高めることができるような気がしています。
そもそもの文学理論を学んでみたくなり、高校時代の国語の先生にお伺いして購入したのがこちらの一冊です。
正直なかなかの強敵でした。
理解できたのはほんの一部という感覚です。
それでも自分は批評家になりたいわけではなく、いかに小説を読み解くことで自分の人生を豊かにできればいいのだと開き直ることができました。
学生時代に聞いたことがあるものから初耳のものまでありました。
最初に「テクスト」という項目から始まります。
その中にこのような一文があります。
読むことは、読者自身の記憶の中にある多様なジャンルの記憶と、いま読んでいるテクストを相互にかかわらせることであり、そのことによって読者自身のテクストを織りだしていくことにほかならない。
『読むための理論ー文学・思想・批評』(世織書房(p8)
これを読んでわたしはなるほどなと思いました。
例えば、作品内にAという物体が出てきたとします。
過去にAという物体を見たことがある人はそれを頭の中に思い浮かべ、その上で作品の中に入って読み進めていきます。
それができなければ想像が多くなり、解像度は下がることにつながるでしょう。
小説を楽しむには小説に書かれていることを正確に読み解くことも大切ですが、書かれていることを正しく想像できることも求められているのだと感じました。
それは小説をたくさん読み進めればできることではなく、日常生活でどれだけの体験と物を見る目を養うかだと思います。
そうして少しずつ蓄積していったものが小説の理解の助けとなり、読んだことで日常生活も豊かにしていくのだと思います。
大変むずかしかったですが、チャレンジしてよかったです。