加納朋子『カーテンコール!』(新潮文庫)

今回紹介する本は、加納朋子さんの『カーテンコール!』(新潮文庫)です。

 

2022年9月に北海道砂川市にあるいわた書店に行きました。

カルテと呼ばれるアンケートをもとに1万円ほどの本を選んでくれる「一万円選書」というサービスで有名です。

以前、一万円選書に当選して本を選んでいただいたお礼をかねて足を運びました。

訪れたその際に6冊文庫本を購入しまして、そのなかの一冊です。

こちらの文庫版では店主の岩田徹さんが解説を書かれています。

 

話の舞台は閉校が決まっている私立の女子大です。

最後の卒業生を送り出した幕を閉じる予定でしたが、各々の事情で卒業できなかった生徒がいたため寮生活を送りながら補講をすることになりました。

大学が閉校するので最後の年と分かっていて留年をしているので多くは落ちこぼれではあるものの、単なる学業不振というだけでなく、様々な事情があります。

そのような生徒たちの面倒を最後まで見ると決めたのは角田理事長でした。

言葉遣いからは柔和な表情が思い浮かべられますが、生徒たちを缶詰めにして妥協を許さないのはなかなかです。

共同生活を通して少女たちは色々なことを考え学んでいきます。

閉校と同時に理事長の職から離れると思いきや、卒業できない生徒がいるのは舞台が終わっても拍手をして役者が現れるのを待っている「カーテンコール」のようだと例えています。

最後の角田理事長の親の代の私塾から大学設立、そして閉校までのストーリーが述べられているところはとても印象的でした。

 

表紙にも描かれているひまわりの花言葉は「あなたは素晴らしい」です。

どんな状況であれ、コンプレックスがあろうと自分で自分のことを認めてあげられることってとても大切なことだと感じました。

印象に残ったのはこちらの文です。

十年先、二十年先に自分がどうなっているか。どうなりたいか。すぐには答えが見つからなくとも、考え続けるのをやめないで下さい。

加納朋子『カーテンコール!』(新潮文庫)(p327)

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野田祥代『夜、寝る前に読みたい 宇宙の話』(草思社)

松浦弥太郎『場所はいつも旅先だった』(集英社文庫)

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