小説の楽しみはそのストーリーを味わうところにあります。
しかしそれだけが全てではありません。
その小説をきっかけに過去のことを振り返ることもあります。
読まなくても本棚に収まっているだけで良い雰囲気を醸しだしてくれる本というものもあります。
そのようなことを、山本善行 撰『上林暁 傑作小説集 孤独先生』(夏葉社)を読んで感じました。
夏葉社の島田さんのつくる本はどれもしっかりとしたもので見ているだけでも惚れ惚れとします。
勤務の休憩中に読んでいると「格好いい本だね」と言われました。
「古書善行堂」店主の山本善行さんが選者となり、上林暁さんの小説を編んだものです。
表題作の『孤独先生』を含む11編の短編小説で構成されています。
昔の言葉の影響なのか、私との相性なのか、読みながらもはっきりとした情景というものがなかなか思い浮かびませんでした。
しかし、読みながら色々なことを考えました。
特に印象的だったのは表題作の『孤独先生』です。
学校に一人はいるような名物先生について書かれているものです。
学生時代は多くの先生にお世話になりました。
授業よりもホームルーム等で言っていたことが今でもたまに思い起こされることがあります。
何を与えるかと同時にこれからも大切にすべき指針というものを教わったのだと読みながら考えました。
もう少し大人になったらまた読みたい一冊です。
そのときまでしっかりと本棚に収めておきます。