凪良ゆう『流浪の月』を読んで考える「事実と真実」と「愛」

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「本を語る、人と繋がる」をテーマに札幌ゼロ読書会を主宰しています、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)です。

今回は、本の紹介です。

 

紹介する本は、凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社)です。

2020年の本屋大賞受賞作品です。

本屋大賞を受けて読んだ方からおもしろかったよと評判を聞き、図書館で予約していました。

ようやく順番が回ってきたという感じです。

周りが良いと言っていた作品は総じてもっと早く読むべきだったと思うのですが、こちらの本もそうでした。

 

簡単にあらすじを紹介します。

更紗という女性が物語の主人公で一人称語りで進んでいきます。

9歳のときから話が始まります。

訳あって伯母の家にお世話になることになりますが、居心地のわるさを感じます。

あるとき、公園にいたロリコンと噂される大学生であった佐伯文という青年に出会い、ついていきます。

そのままマンションでの不自由ない解放された生活を2ヶ月送りますが、誘拐事件としてメディアでも取り上げられます。

ただ、更紗としても合意の上での同居であり、文に対するひとつひとつの発見が新鮮なものと感じていました。

あるとき、動物園に行きます。

そこで通報されて、文は連行され離れ離れになってしまいます。

それでも更紗の心の中に文は消えることなく残り続けます。

それから時が経ち、大人になりあることがきっかけで更紗と文は再会することになります。

そこから話が進んでいきます。

 

事実と真実というものをとても考えさせられました。

少女期の更紗が文の家で2ヶ月過ごすことは側からみれば、誘拐であり監禁という事件です。

合意があったとはいえ更紗は警察に言えない心境でもありましたし後悔もしています。

他からは辛い思いをしたんだなとか加害者に感情移入するストックホルム症候群ではないかと同情されますが、更紗としてはちっとも分かっていないという感情です。

大人になってからの更紗には恋人もいましたが暴力を振るわれたり、自分の考えを無視されたりと心の穴を埋める存在ではありませんでした。

男女が大人になれば、結婚という形も見えてくるのかなと思います。

しかし、それが全てでもなければ人に対する思いを「愛」の一文字で片付けるのも違う気がします。

 

わたしのこの小説での渾身の一節はこちらです。

世の中に『本物の愛』なんてどれくらいある? よく似ていて、でも少しちがうもののほうが多いんじゃない? みんなうっすら気づいていて、でもこれは本当じゃないからと捨てたりしない。本物なんてそうそう世の中に転がっていない。だから自分が手にしたものを愛と定めて、そこに殉じようと心を決める。それが結婚かもしれない。

凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社)(p140)

最後まで読んでいただきありがとうございます。

それでは、よりよい一日をお過ごしください。

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