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今回紹介する本は、東野圭吾さんの『ブラック・ショーマンと覚醒する女たち』(光文社) です。
ブラック・ショーマンシリーズの第二作は短編集となっています。
物語の中心はトラップハンドというバーを経営する元マジシャンの神尾武史という男性とリフォーム会社で働く真世です。
武史は元マジシャンとだけあって観察眼に優れています。
プロファイリングをするかのように、その人物が何者かを見抜くこともしています。
バーに連れてこられた男性の「査定」を頼まれることもあります。
短編集ではありますが、二人を中心にさまざまな出来事が起こります。
連作短編のような趣もありましたので、その点でも楽しむことができました。
前作である『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』(光文社) はコロナ禍真っ只中のときに出版されました。
今回もコロナ禍に触れているところもありますし、マッチングアプリについても書かれていました。
流行のものを作品に取り入れると、それが古いと感じられることもあると思います。
コロナ禍で皆がマスクをしなければいけなかったときと、任意となった今を比べると、作品から受ける印象も異なります。
新しいものをどんどん取り入れてその反応を見るというスタンスもあるのだと思います。
私は東野さんは作品が古くなることを恐れていない作家さんなのではないかと感じています。
その時にしか書けないことを書くことで、その時代を生きている人に響くものがあればと思われているのではないかと想像します。
流行病があってもテクノロジーが進歩しても、人間の本質というものはどこまでいっても変わりません。
そのようなことを想像しながら読みました。
印象に残ったところを紹介します。
作中で元マジシャンの武史にこのようなセリフがあります。
「ミステリ小説としてはB級だが、十分に考えられるところだ」
東野圭吾『ブラック・ショーマンと覚醒する女たち』(光文社)(p67)
ミステリ小説の中で、そのトリックはミステリ小説としてはB級だと言及しています。
一種の自己否定のようなものを感じましたが、それをたたき台としてなお作品として創り上げていく深さを感じました。