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今回紹介する本は、東野圭吾さんの『クスノキの番人』(実業之日本社)です。
これで読むのは3回目になります。
一度読んだ本はすぐに手放すという方もいらっしゃるかと思います。
わたしはいずれくるかもしれない、また読みたいときのために手元に残しておきたいタイプです。
また買えば、また借りればと思う方もいらっしゃるかと思います。
わたしには、また読みたいと思ったときにすぐに手に取ることができるという、その一瞬の機会さえ逃したくないという思いがあります。
一度読んだ本でも当然ながら忘れてしまっているところはあります。
覚えていたとしてもある程度知っていて読むのでは読む深さが異なり、新たな気づきもあるのでおすすめです。
今作は「クスノキの番人」をすることになった直井玲斗が主人公です。
法律を犯し捕まりましたが、これまで接点のほとんどなかった亡くなっている母親と腹違いの姉である千舟が取り計らい釈放となりました。
そのときの条件がタイトルにもなっているクスノキの番人をすることでした。
神社にあるクスノキには不思議な力があると言われており、祈念をする人が多くやってきます。
ミステリーの要素としてはクスノキのもつ力はなんなのか? なぜ人はクスノキに祈念をするのか? といったところです。
言葉というものは思考の上澄でしかないということを聞いたことがあります。
確かにその通りだと思います。
うまく伝えられなくて誤解されることもあるでしょうし、頭の中をそのまま伝えられたらと思うこともあります。
だからこそどうやって伝えるかはこれからも考え続けなければいけないと思います。
これは玲斗の成長の記録でもあります。
クスノキの番人の仕事に慣れてきた頃に出掛けたパーティーで将来をどう思い描いているか聞かれてこのように答えます。
一瞬一瞬を大切にして、前から石が転がってきたら素早くよけ、川があれば跳び越し、越せない時は跳び込んで泳いで、場合によっては流れに身を任せる。
そんなふうに生きていこうと思っています。
そうして死ぬ時、何か一つでも自分のものがあればいいです。
それはお金じゃなくてもいいし、家や土地みたいな大層な財産じゃなくてもいいです。
ぼろぼろの洋服一式でも、壊れた時計でもかまいません。
だって生まれた時には、この手には何もなかったんですから。
だから死ぬ時に何か一つでも持っていたら、俺の勝ちです。
東野圭吾『クスノキの番人』(実業之日本社)(p164)
とあります。
「根無し草として生きる決意表明」と揶揄されますが、わたしは今この瞬間を精一杯生きる決意のように感じでいいなと思いました。
言葉だけでは伝えられないからこそ生き方という態度も問われます。
そういう態度で生きていれば自然とそれが言葉にも表れてくるのではないかと思います。