「事実と真実」と「愛」

今回ご紹介する本は、凪良ゆうさんの『流浪の月』(東京創元社)です。

2020年の本屋大賞受賞作品です。

本屋大賞を受けて読んだ方からおもしろかったよと評判を聞き、図書館で予約していました。

ようやく順番が回ってきたという感じです。

周りが良いと言っていた作品は総じてもっと早く読むべきだったと思うのですが、こちらの本もそうでした。

 

簡単にあらすじを紹介します。

更紗という女性が物語の主人公で一人称語りで進んでいきます。

9歳のときから話が始まります。

訳あって伯母の家にお世話になることになりますが、居心地のわるさを感じます。

あるとき、公園にいたロリコンと噂される大学生であった佐伯文という青年に出会い、ついていきます。

そのままマンションでの不自由ない解放された生活を2ヶ月送りますが、誘拐事件としてメディアでも取り上げられます。

ただ、更紗としても合意の上での同居であり、文に対するひとつひとつの発見が新鮮なものと感じていました。

あるとき、動物園に行きます。

そこで通報されて、文は連行され離れ離れになってしまいます。

それでも更紗の心の中に文は消えることなく残り続けます。

それから時が経ち、大人になりあることがきっかけで更紗と文は再会することになります。

そこから話が進んでいきます。

 

事実と真実というものをとても考えさせられました。

少女期の更紗が文の家で2ヶ月過ごすことは側からみれば、誘拐であり監禁という事件です。

合意があったとはいえ更紗は警察に言えない心境でもありましたし後悔もしています。

他からは辛い思いをしたんだなとか加害者に感情移入するストックホルム症候群ではないかと同情されますが、更紗としてはちっとも分かっていないという感情です。

大人になってからの更紗には恋人もいましたが暴力を振るわれたり、自分の考えを無視されたりと心の穴を埋める存在ではありませんでした。

男女が大人になれば、結婚という形も見えてくるのかなと思います。

しかし、それが全てでもなければ人に対する思いを「愛」の一文字で片付けるのも違う気がします。

 

わたしのこの小説での渾身の一節はこちらです。

世の中に『本物の愛』なんてどれくらいある? よく似ていて、でも少しちがうもののほうが多いんじゃない? みんなうっすら気づいていて、でもこれは本当じゃないからと捨てたりしない。本物なんてそうそう世の中に転がっていない。だから自分が手にしたものを愛と定めて、そこに殉じようと心を決める。それが結婚かもしれない。

凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社)(p140)

読書会情報

読書会の情報は お知らせ をご覧ください。

募集の案内はLINEでも行っています。

月初に読書会情報を配信しています。

申し込みはLINEからお待ちしています。



LINEの友だち検索「@pgc8174h」でも出てきます。

LINE オープンチャットへのご参加はこちらからどうぞ!

ポッドキャストでも本の紹介をしています

書いている人


正しい情報を見極めろ!『成功したければ本を読め!』

齋藤孝『読書する人だけがたどり着ける場所』を読んで、読書術のヒントを得る

関連記事

  1. 芥川龍之介『戯作三昧・一塊の土』(新潮文庫)

    こんにちは、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)です。「…

  2. 朝井リョウ『正欲』(新潮文庫)

    こんにちは、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)と申します。…

  3. 朝倉かすみ『よむよむかたる』(文藝春秋)

    私が主催している札幌ゼロ読書会も参加される方々の大切な居場所になったらいいな…

  4. アカデミックなミステリーを堪能しました

    今回ご紹介する本は、鈴木結生さんの『ゲーテはすべてを言った』(朝日新聞出版)…

  5. 故郷とはそこにあるもの

    こんにちは、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)です。「…

  6. 川村元気『仕事。』、「仕事。」楽しんでいますか?…

    「本を語る、人と繋がる」をテーマに札幌で読書会を開催しています、本のチカラで…

  7. 過去の自分に声をかけるとしたら

    今回紹介する本は、東野圭吾さんの『クスノキの女神』(実業之日本社)です。…

  8. ?から!の大きさがミステリーの魅力

    旅のお供に本は欠かせません。移動中に没頭するように読み、たまに外の景色を…

PAGE TOP