今回ご紹介するのは、古賀史健さん(絵:ならのさん)の『さみしい夜のページをめくれ』(ポプラ社)です。
同じくポプラ社から出版されている『さみしい夜にはペンを持て』では、書くこと、特に日記を書くことの大切さが語られていましたが、本作では「読むこと」について綴られています。
著者の古賀史健さんはライターであり、代表作にはアドラー心理学をわかりやすく紹介した『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)があります。
この本は世界的なベストセラーにもなりました。
現在は、平日毎日noteを更新されており、愛犬のビーグル・ペダル君の写真とともに日々の思いや考えを発信されています。
物語の中心人物は、うみのなか中学校3年生のタコジロー。
受験を控えるなかで、なかなか進路を決められずにいます。
そんなとき、ヒトデの占い師との出会いをきっかけに、仲間たちとともに「生きていくうえでのヒント」を見つけていきます。
多くの読書指南書は、「こうやって本を読めばいい」「おすすめ本はこれ」といった形式が多いように思います。
一方で、本書の特徴は、それらを物語の中に溶け込ませている点です。
タコジローやその仲間たちの成長とともに、読書の魅力が語られ、自然と心に入ってきます。
これから本に触れていこうとする人は、タコジローや彼の同級生に自分を重ねて読むのがおすすめです。
本を人に勧めたり、差し出したりする立場の人であれば、ヒトデの占い師の視点で読むと、また違った発見があるはずです。
印象に残った一節をご紹介します。
「アンタも図書委員なら憶えておきな。アタシたちはみんな、本を渡すことはできても、読書を渡すことはできないのさ」
古賀史健『さみしい夜のページをめくれ』(ポプラ社)(p169)
これは、ヒトデの占い師の言葉です。
本は「物体」であり、読書は「体験」です。
同じテーマパークに行っても、人によって感じることが違うように、同じ本を読んでも、受け取り方は人それぞれです。
感動した本を誰かにすすめるとき、その感動そのものを渡したいと思ってしまうことがあります。
あるいは、自分が感動したように、相手も同じように感動するはずだと期待してしまう。
でも、そうした気持ちが、「この本を読みなさい」と押しつけたり、「感想を教えて」とすぐに求めたりする、「読めハラ」につながるのかもしれません。
私自身、誰かに向けて直接的に本をすすめることは、あまりしなくなりました。
やはり「自分が読みたいと思った本を読む」ことが、いちばん自然で、豊かな読書体験につながると思うのです。
このヒトデの言葉は、まさにそれを体現していると感じました。
自分にとって意味のある本は、自画像のような役割を果たしてくれます。
その目安として、「自分の年齢の数だけ大切な本を持つ」という考え方が、本書の中で紹介されていました。
昔、Twitterでは「本棚の10冊で自分を表現する」というハッシュタグが流行りました。
最近では「名刺代わりの小説10選」という形で、本を通じて自分を紹介する流れもあります。
ジャンルや幅を固定せず、自分の中から出てきた本を挙げてみるのも面白いかもしれません。
私も考えてみました。その結果がこちらです。
どんな印象を受けたか、ぜひ教えてください。