今回ご紹介する本は、町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』(中公文庫)です。
主催する第9回 課題本読書会で私が推薦し、選んでいただきました。
読書会に備えて2回読みました。
物語の主人公は貴瑚という女性です。
訳があって田舎に越してくることになります。
とても閉鎖的な環境でスーパーで目撃されては噂話をされる状況です。
ある日、話ができない少年と出会うことになります。
少年は母親から虐待を受けていることを知り、彼のために何ができるかを考えていきます。
彼の名前がわからないのでなんと呼ぼうかと考えたところ出てきたのが「52ヘルツのクジラ」の話でした。
クジラは通常10〜39ヘルツほどの周波数を出しますが、それよりも高い52ヘルツの声を発するクジラがいるとのことです。
他の仲間に聞こえない周波数で歌うクジラの話から少年を「52」と呼ぶことにします。
貴瑚は少年にとってどうするのがいいのか考えて行動していきます。
本屋大賞受賞作ということですがなかなか重たいテーマでした。
貴瑚自身も虐待を受けていたという過去があります。
虐待や恋人による束縛、トランスジェンダーなどテーマは多岐に渡ります。
テーマのひとつに孤独というものがあります。
52ヘルツのクジラは声を発するものの他の仲間から反応がもらえることはありません。
それが不幸なことなのかは正直わかりません。
それを受け入れることができる人もいるのかもしれません。
そういう意味ではこういう状況を憂うのは孤独ではなく、孤立なのではないかと思いました。
どこまでも親身になってくれる人がいたとしても完全に分かり合えることはできません。
そう考えると何かあったときに助けてくれる人がいるというのはなんとも恵まれた状況なのだと思います。
52と呼んだ少年を救った貴瑚も身近な人に救われたという過去があります。
人に優しくされた人が人に優しくできるのかなと思いました。
この小説を私は「52が貴瑚の愛を知る物語」と考えました。
最終的には52の名前を貴瑚が呼ぶことになります。
そのシーンの情景は目に浮かぶように良い場面でした。
最近は逆にキラキラネームという言葉を聞くことが少なくなりました。
難読な名前をつけたとしてもそこには親としての想いが込められているのだと思います。
そうして名付けた子を虐待してしまうのは親子の問題だけでなく、社会の問題でもあると感じました。
テーマとしては読む人を選ぶかもしれませんが、文章自体は読みやすかったです。















