今回ご紹介する本は、白井一幸さんの『メンタル・コーチング』(PHP)です。
『致知2023年3月号』の対談記事で登場されてらっしゃいました。
白井さんは2023WBC侍ジャパンでヘッドコーチをされたのが記憶に新しいです。
それ以前は北海道日本ハムファイターズで栗山監督、ヒルマン監督のもとでヘッドコーチをされていました。
この本は2007年初版なので少し古めですが、書かれていることに古さは感じませんでした。
今でこそ野球の世界もメンタルトレーニングが取り入れられているのを耳にします。
白井さんの学生時代はプレッシャーに強かったそうです。
大会に向けてしっかりとコンディションを整え、そこで力を発揮するタイプであったそうです。
しかし、プロ野球となると環境が変わります。
毎日のように試合があり、そのモチベーションを維持するのはなかなか大変です。
その中で取り入れたのが当時野球界では珍しかったメンタルトレーニングです。
それによりメンタルが安定して試合に臨むことができたと記述されていました。
日本では優秀だった選手がそのまま指導者となるケースが多いです。
各球団の監督を見ても現役時代に華やかな成績を残された方が大半を占めます。
しかしそういう方が必ずしも監督として優れているかというとそのようなことはありません。
もちろんそういう方もいますが、それは監督としての組織づくりにも長けているということなのかもしれません。
白井さんは自身の経験をもとに指導者像を構築していきました。
昔からそうだったからこうするではなく、理論に基づいて行動していきました。
これは日ハムを退団したのちにヤンキースに留学された経験も大きかったのかなと思います。
野球というのは試合で活躍をしてなんぼの世界です。
勝負どころを見極めて、力を発揮していくことが大切です。
そのためには全力を尽くすということなのですが、ここでいう全力とは何でしょうか?
引用します。
全力には、「準備の全力」「頭の全力」「心の全力」そして「体の全力」と、四つの全力があるのだ。
すべての全力を出してはじめて「全力を出した」と言えるのである。
白井一幸『メンタル・コーチング』(PHP)(p66)
とあります。
力を発揮しなければいけない場面になって、さあ頑張ろうというのでは遅いということです。
また体は動けるように温まっていながら、やる気に満ちた心の中で頭では冷静であるといった複雑な状況も求められると感じました。
組織としてどういう言葉がけをしていくかについては教育の意味合いも強い二軍監督を経験しての言葉ではありますが印象に残りました。
二軍で勝負感を身につけておかないと一軍に上がってすぐに対応できるわけではないのですね。
何事においても練習は試合のように、試合は練習のようにできたらいいですね。