川越宗一『熱源』(文春文庫)

こんにちは、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)と申します。

「本を語る、人と繋がる」をテーマに、札幌ゼロ読書会の運営をしています。

また、ブログやSNS、ポッドキャスト等の発信活動を通して、本の魅力や読書の素晴らしさを伝えています。

 

今回ご紹介するのは、川越宗一『熱源』(文春文庫)です。

第162回 直木賞受賞作品です。

文庫でサイン本があったので購入してありました。

私が札幌に住んでいて、アイヌ民族が出てくるということは知っていたのでいつか読んでみようと思っていました。

 

作品の舞台は明治時代から終戦にかけてと時間軸が長めになっています。

私は歴史小説が苦手なので避ける傾向にありますが、今作品は登場人物の多さの割には読みやすく、会話のなかにハッとさせられるものが多かったので、つまみ食いをするような感覚でも楽しめました。

日本に日本人として住んでいるとあまり民族のことについて考える機会は少ないかもしれません。

北海道はかつてアイヌ民族の土地であり、現在の地名の多くがアイヌ語に由来するものも多いことも知っています。

ただそれがどこまで生活に関与しているかと言われるとなんとも言いにくいところがあります。

戦争によって土地が取り上げられるだけでなく、言葉や名前も変わってしまう感覚というのは体験をしてみないとわかりません。

私に日本人としてのアイデンティティといったものがどれくらいあるのかを指し測るものさしは正直いってわかりません。

明日から別の国の人で使う言語も変わりますと言われて心がすぐに対応できるとは思いません。

統治するということが対等に見ていたのか、もしくは卑下していたのかは勉強しなければいけないなと感じました。

 

印象に残ったところを紹介します。

「戦争も何もかも、生きてる人間が始めたんだ。生きてる人間が気張らなきゃ、終わんないだろ。あたしもあんたも、まだ生きてる。なら、できることがある」

川越宗一『熱源』(文春文庫)(p477)

先ほどあげた「奪われたもの」は戦争によるものです。

戦争によって第三者とも呼べるそこにいた人たちが影響を受けてしまっていたのです。

世界には国をもたない民族もあります。

彼等に対して勝手に線を引いてしまうのもきっと違うのだろうと思いました。

読書会情報

読書会の情報は お知らせ をご覧ください。

募集の案内はLINEでも行っています。

月初に読書会情報を配信しています。

申し込みはLINEからお待ちしています。



LINEの友だち検索「@pgc8174h」でも出てきます。

LINE オープンチャットへのご参加はこちらからどうぞ!

Facebookオンラインコミュニティはこちらから

音声でも本の紹介をしています

書いている人


第138回 読書会「本の話をしよう」@カフェエスキス

スペシャリストとゼネラリスト

関連記事

  1. 考えるために歩くという選択肢を取り入れる

    私は「考える」という行為が好きです。移動手段としての歩くという行為も好きなの…

  2. 佐川光晴『見えなくても王手』(実業之日本社)

    今回ご紹介する本は、佐川光晴さんの『見えなくても王手』(実業之日本社)です。…

  3. 加納朋子『カーテンコール!』(新潮文庫)

    今回紹介する本は、加納朋子さんの『カーテンコール!』(新潮文庫)です。&…

  4. ?から!の大きさがミステリーの魅力

    旅のお供に本は欠かせません。移動中に没頭するように読み、たまに外の景色を…

  5. 住野よる『君の膵臓をたべたい』を読んで考える「運…

    第17回「本を語る読書会」で紹介した一冊です。友人からのオススメをきっか…

  6. 角田光代『空中庭園』(文春文庫)

    こんにちは、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)です。「…

  7. 読書の目的を見失わないために〜東野圭吾の警鐘〜

    今回ご紹介する本は、東野圭吾さんの『超・殺人事件 推理作家の苦悩』(新潮文庫…

  8. 夜の底が白くなった。

    今回取り上げる本は、川端康成『雪国』(新潮文庫)です。古典と呼ばれる作品…

PAGE TOP