どう生きるかというのは一生のテーマだと感じました。
今回ご紹介するのは、皆藤章さんの『それでも生きてゆく意味を求めて』(致知出版社)です。副題として「こころの宇宙を旅する」とあります。
『致知2024年11月号』に医師の鎌田實氏との対談記事があり、そこで紹介されていたので手に取りました。
著者の皆藤章さんは臨床家です。京都大学在学中に臨床家の河合隼雄氏に薫陶を受け、臨床家の道へと進んでいくことになります。
わたしは河合隼雄さんのご存命中のことは知らないのですが、書籍を読むとニコニコしていてユーモアを交えてお話しする優しいおじさんという印象を私は勝手にしていました。違う立場の人から見た印象は異なることを当然ながら感じました。必要なことを適切な場面で発言されている印象を受けました。
この本では皆藤さんの生い立ちから臨床家へと進むまで、その道での苦労について書かれています。もちろんカウンセリングには守秘義務があるので書けない部分は当然あったかと思います。人間を相手に仕事をするというときには相手に敬意を払うということが大切だと思いました。河合さんは臨床を「床に臨む、たましいのお世話」と表現されており、なるほどなと思いました。
自分の手によって人生を閉じるという選択肢が用意されているとはいっても、人生は自分の力だけではいかないことが多々あります。思い通りにいかないことのほうが多いかもしれません。そのようなときは自分の手によってできること、相手に委ねるところを区別し意識することが大切なのかなと思います。
エピローグで皆藤さんはこう書かれています。
結局のところ、人生というのは偶然の縁を生かそうとする営みなのではないかと思う。
皆藤章『それでも生きてゆく意味を求めて』(致知出版社)(p315)
この世に生まれてきたのも偶然である以上、そこから起こることもすべて偶然の結果と考えることもできます。それを縁と捉えるかどうかはその人次第です。ただ、縁と考えなければ生じてくるものもなくなってしまうのかもしれません。
どう生きるかというのは一生をかけて考えていくテーマであると改めて感じました。死を迎えたときに答え合わせができるかもしれませんので、それまで考え続けたいと思います。