今回ご紹介する本は、飯田一史さんの『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』（平凡社新書）です。
とてもインパクトのあるタイトルです。
双子のライオン堂でオンライン受講可能の講座があるとの情報を得て、申し込みました。
かつて書店というものは生活の一部であり、通勤通学のついでに立ち寄るような場所でした。
大型ショッピングモール内に書店ができたり、ネット書店の利用が広まったりすることによって町の本屋は厳しい状況になります。
ただ、決してそれだけではなく「つぶれる」ベくしてつぶれていったという状況とも言えるのだと私は思いました。
私が誤解していたことに本の再販制度というものがあります。
新刊本の値段は全国どこで買っても同じ値段です。
「本は教育をはじめとする文化的な側面を担っているので」こうなっていると解釈をしていました。
でも、少し考えてみれば変わった決まりでもあるように思います。
全国どこでも食料品が同じ値段で売られるということはありません。
産地によって値段も違いますし、輸送にお金が掛かればその分値段は上がるはずです。
しかし新刊本の値段は全国一律で同じです。
そこで出てくるのが再販制度です。
簡単にいうと出版社が本の値段を決めることができるというものです。
それを卸売業者である取次を経由して本屋さんが売っています。
本屋さんが目の前の本を売る時点でどれだけの利益が出るかはすでに決まっています。
さらにそのマージンが日本は諸外国に比べて低く設定されています。
出版社が本の値段を決める際にそのコストの分、高くすることはあっても書店のことまで考えて行うとは考えにくいです。
これは出版社が悪いということではなく、商売というのはそういうものだというものです。
卸売の値段が上がり、大変になっているのに自分たちの取り分を増やすことができないというジレンマがあるのだと感じました。
それなら再販制度を廃止すればいいじゃないかとなりますが、これは法律で決まっていることなのでそう簡単にはいきません。
上の立場にある人たちがわざわざ自分たちをこれ以上苦しくするような方策を立てることはないでしょう。
独占禁止法というのは公平公立の立場での市場運営が目的なので、低い立場にある人たちでも談合は許されないという難しさもあります。
本の値段は一定であってもポイント還元などがあります。
送料無料も実質値下げであると言えます。
それをうまくやっているのがネット書店です。
取次を通さず直取引をすることによって書店はマージンを増やすこともできます。
ちなみに本の値段は決まっていると言っても、これは当事者間取引の問題だそうです。
どこの書店が守っていないと言っても外部の意見は無意味とも言えます。
そういう観点では広がりを見せているZINEなどは書店側で自由に値段を決められるとしています。
最近では本屋にはさまざまなサービスが付帯しているものが多いです。
本を買わないで持ち込んで読めるカフェを併設したものもあります。
イベントが開催される書店もあります。
本を売るだけの利益でなく、他のことも行うことによって続けていく道を模索しているようです。
本屋のことを副業にして兼業で続けていく道はまだまだ残されているようです。
それでも本屋を続けるために本以外を頑張るのが当たり前な仕組みというのはなんだかモヤモヤしてしまいます。
一消費者としてはほしいと思った本はそれが本屋さんで見つけたものならば迷わずそこで買うようにしたいです。
