辻山良雄『本屋、はじめました 増補版』(ちくま文庫)

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今回ご紹介するのは、辻山良雄『本屋、はじめました 増補版』(ちくま文庫)です。わたしは円錐書店でこの本に出会いました。本を読むのも好きですが、本屋という空間そのものにも魅力を感じ、旅行中も必ず立ち寄るほどです。そういう意味では日常でも旅といった非日常でも本屋さんは欠かせない存在です。

辻山さんは、もともと大手のチェーン書店で働いていましたが、退職して新刊書店「Title」をオープンしました。本書では、その企画から立ち上げまでの道のりが詳細に描かれています。ニュースにもなるように、書店は次々と姿を消していますが、そんな時代のなかで経営の難しさとやりがいをリアルに綴る内容には、読んでいてワクワクさせられました。特に印象的だったのは、退職後もチェーン店と良好な関係を保ち続けている点です。独立した人が古巣と関係を続けるのは簡単なことではありませんが、辻山さんの誠実な姿勢がそれを可能にしたのだと思います。

印象に残ったところを紹介します。

本はどこで買っても同じとはよく言われることだが、実はどこで買っても同じではない。価格やポイントでお客さんを釣るのではなく、本の価値を<場>の力で引き立てることにより、その本は買った店とともに、記憶に残る一冊となる。

辻山良雄『本屋、はじめました 増補版』(ちくま文庫)(p242)

確かにその通りだと思いました。わたしはネット書店を使うこともありますが、ネット書店で本を眺めていて一目惚れすることはまずありません。実際に本屋さんに足を運ぶからこそ見つかる、自分にとっての一冊があるものです。そういう出合いのためにも改めて本屋さんというのはなくてはならない存在だと思っています。

また、辻山さんの仕事への向き合い方にも深く共感しました。私自身も、日々の業務において誠実であることを大切にしており、こうした姿勢が周囲に自然と伝わっていくと感じています。働いてる分野は違いますが、辻山さんを見習い、これからもお客様との信頼関係を一つ一つ大切に築いていきたいと思います。

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