今回ご紹介する本は、伊藤礼さんの『旅は老母とともに』(夏葉社)です。
興味をもっていたところ、円錐書店で見つけて購入しました。
小説家や詩人・文芸評論家等、多岐にわたるジャンルで活躍された北海道生まれの伊藤整さんの次男です。
表題作を含める10篇のエッセイが収められています。
初読みでしたがとても読み心地の良い文章でした。
私は本を読むときに心に響く一文があったら付箋紙を貼るようにしています。
このエッセイ集では付箋紙を貼ることがありませんでした。
かといって印象に残るところがなかったわけではありません。
わかりやすい平明な文章がとてもいいなと思いました。
つっかえるところがないというのは文章の基本でありながら大事な部分だと感じました。
表題作は母親と一緒に北海道へ旅をしにいく話です。
衰えてくると遠くへ出かけるのが億劫になっていくことは想像がつきます。
健康上の理由から避けてしまうこともあるかと思います。
それでも何かしらの行きたいという動機は遠くへ足を運ぶ突き動かす原動力になるのだと感じました。
冒頭の「教訓」では自身が生まれるルーツについて考察をしています。
私は伊藤礼さんと同じく次男です。
もし親が子供は一人と決めていたら自分は存在していなかったことになります。
そもそも決まった精子と卵の存在を考えるとその仮説は成り立たないのかもしれません。
それでも意思を持った存在という点では考えられるのかもしれません。
もちろん自分が生まれてきたときの様子やそれ以前のことを直接知る方法はありません。
残されていた手紙から類推することができます。
後世に何が役に立つかはわかりません。
そう考えると何を残すかを考えておくことも必要なのかなと思いました。
この本の出版は夏葉社です。
夏葉社は島田潤一郎さんがひとりで行っている出版社です。
ひとり出版社としての先駆け的な存在です。
良いとされる本も時代を経て絶版となってしまっているものも多々あります。
そういった本に再び光を当ててくれています。
それだけでなく、美しいシンプルな装丁が多く本棚に収めていたくなります。
これからも楽しみにしています。
市立小樽文学館で展示がされているというタイミングで読むことができました。
会期は2025年12月7日まです。
















