作家としての気概を感じた

今回ご紹介する本は、東野圭吾さんの『マスカレード・ライフ』(集英社)です。

 

私は東野圭吾さんの作品のファンです。

好きな作家を聞かれたら食い気味で「東野圭吾さんです」と答えます。

これまでに書籍として刊行されている作品は全て読んでいます。

なので、新刊情報を聞くとワクワクします。

 

ここ数年の動きとして出版社ごとにシリーズものを刊行している感じがします。

現在の集英社では「マスカレード」シリーズであり、今作品は第5弾となります。

順番に読んだほうが人物理解も進んで読みやすいかと思いますが、ストーリーは独立していますので今作品からでも楽しむことができます。

 

本作の舞台は東京の「ホテル・コルテシア東京」です。

もともと他のホテルで文学賞の選考会が開かれることになっていました。

候補者の中のひとりに死体遺棄事件の容疑者がおり、「ホテル・コルテシア東京」に場所が変更になりました。

そのホテルにはかつて刑事であった新田が保安課長として勤めています。

第4作まで刑事として働いており、このホテルでの事件にも携わっていました。

事件の際にホテルフロントであった山岸に怪我を負わせてしまい、引責する形で退職をしましたが、敏腕ぶりを買われて転職をしました。

 

そのホテルにアメリカでも活動している弁護士である父が来たことがわかります。

文学賞が絡む事件と新田の父親が絡む件のふたつの話が軸となって物語が進んでいきます。

 

東野圭吾さんの作品の魅力を挙げるならば、まずは圧倒的な読みやすさだと思います。

読んでいて突っかかるところがありません。

それだけでなく頭の中で映像化がしやすいように感じます。

それだけ多くの作品が映像化されていることを考えると納得いただけるのではないでしょうか?

また、緻密なプロットにも魅力があります。

紙の小説を読んでいると当然ながら残りの分量というものが目で見てわかります。

残りこれだけのページしかないのにどうやってまとめるのだろうと思っていても、さすがにきっちりとした読後感を味わせてくれます。

 

東野圭吾さんはかつて直木賞の選考委員を務められていた時期もありました。

自身のエッセイでもなかなか文学賞を受賞できなかったことが書かれており、賞に対する思い入れは少なからずあるのだと思います。

作品中の出版社は灸英社となっており、集英社を文字っています。

これはかつての小説『歪笑小説』でも、出てきており、さらにここで出てきた人物や小説が登場しているというユーモアさがあります。

文壇の世界で文学賞の選考委員を務められていた経験が色濃く反映されていました。

それぞれの思惑を抱えながら選考が進められていく様子はリアルさを感じさせられました。

 

選考委員が作中で「小説は大きなトピックはひとつかふたつにするべきだ」という発言があります。

「5つも入れると作品としてまとまりがなくなる」という話の流れからでした。

そして実際にこの作品では物語のトピックをふたつにして進めていくという、静かに有言実行をしているのに気づきました。

芥川賞と直木賞の該当者なしのニュースが話題になりましたが、現役の作家としてここまでできるという気概のようなものを私は感じました。

 

もうひとつの話の軸は父親との関係が絡んでいます。

ガリレオシリーズでもガリレオ先生こと湯川と親との関係が書かれており、今後もテーマとなっていくのかなと感じました。

 

ミステリーというと多くは殺人事件が起こり、その解決に重きが置かれることが多いです。

人が亡くなるというのはどういうことなのか、人を殺めてしまった人が抱えていく思いはどういうものなのかを考えるきっかけになりました。

 

今作も東野圭吾作品にハズレなしの満足感でした。

ぜひ手に取ってみてください。

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