川村元気『私の馬』(新潮社)

こんにちは、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)と申します。

「本を語る、人と繋がる」をテーマに、札幌ゼロ読書会の運営をしています。

また、ブログやSNS、ポッドキャスト等の発信活動を通して、本の魅力や読書の素晴らしさを伝えています。

 

今回ご紹介するのは、川村元気さんの『私の馬』(新潮社)です。

ジュンク堂書店でサイン本を見つけた瞬間、迷わず手に取りました。

表紙のデザインとタイトルに、何か特別な物語が詰まっている予感がしました。

そして、その予感は間違いではありませんでした。

本作の主人公、瀬戸口優子が出会うのは、元競走馬のストラーダです。

乗馬体験でその優美な存在と触れ合ったことで、彼女の人生は大きく変わります。

馬と心を通わせることができる、そんな特別な瞬間が訪れるのです。

 

しかし、その幸福には代償が伴います。

ストラーダを応援し続けたいという思いから、優子は会社のお金に手をつけてしまいます。

その額が膨れ上がる中で、彼女の選択は、読者に深く考えさせるテーマを投げかけます。

 

馬は、人間の些細な感情まで読み取る動物だと言われています。

その力強さや美しさが魅力的である一方で、優子がストラーダと築いた関係には、「語らずとも通じ合う」という独特の形がありました。

この点で、参考文献の河田栈さん『くらやみに、馬といる』の内容が思い出されました。

馬との関わりは、観察力と理解の積み重ねによって築かれるものだいうことが書かれていました。

 

言葉を持たない相手とのコミュニケーションを描いた本作は、言葉が多ければ伝わるわけではないこと、そして観察と相手を思いやる心がいかに重要かを教えてくれます。

この気づきは、日常の人間関係にも深く通じるものです。

 

読後、私は「優子にとっての幸福とは何だったのだろう」と考えました。

彼女が罪を犯した事実がある一方で、ストラーダと心を通わせた時間は確かに彼女の心を豊かにしたはずです。

その幸福をどう捉えるべきか、本作は読者それぞれに問いかけます。

 

『私の馬』は、言葉の限界と心の無限の可能性を描いた傑作です。

馬との関係性を通して、あなたも言葉に頼らずに伝える大切さに気づくことだと思います。

ぜひ手に取ってみてください。

読書会情報

読書会の情報は お知らせ をご覧ください。

募集の案内はLINEでも行っています。

月初の月曜日8時を基本として配信しています。

申し込みはLINEからお待ちしています。



LINEの友だち検索「@pgc8174h」でも出てきます。

LINE オープンチャットへのご参加はこちらからどうぞ!

Facebookオンラインコミュニティはこちらから

音声でも本の紹介をしています

書いている人


せっかくなら繋がれる場を

藤原麻里菜『不器用のかたち』(小学館)

関連記事

  1. 加納朋子『カーテンコール!』(新潮文庫)

    今回紹介する本は、加納朋子さんの『カーテンコール!』(新潮文庫)です。&…

  2. 読書の目的を見失わないために〜東野圭吾の警鐘〜

    今回ご紹介する本は、東野圭吾さんの『超・殺人事件 推理作家の苦悩』(新潮文庫…

  3. 小川糸『ツバキ文具店』(幻冬舎文庫)

    こんにちは、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)です。「…

  4. 立川談四楼『ファイティング寿限無』(祥伝社文庫)…

    こんにちは、井田祥吾(@shogogo0301)です。読書セラピストとし…

  5. 集英社文庫編集部『短編宝箱』(集英社文庫)

    こんにちは、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)です。読…

  6. 朝井リョウ『正欲』(新潮文庫)

    こんにちは、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)と申します。…

  7. 考えるために歩くという選択肢を取り入れる

    私は「考える」という行為が好きです。移動手段としての歩くという行為も好きなの…

  8. 門井慶喜『定価のない本』(創元推理文庫)

    こんにちは、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)です。「…

PAGE TOP