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私は「考える」という行為が好きです。移動手段としての歩くという行為も好きなのですが、考えながら歩くのも好きです。休みの日に散歩をしながら考える時間がとても充実した過ごし方だと考えています。
今回ご紹介するのは、トマス・エスペダル(枇谷玲子 訳)『歩くこと、または飼いならされずに詩的な人生を生きる術』(河出書房新社)です。
いつも読書会の会場としてお世話になっている円錐書店で購入しました。タイトルにピンと惹かれるものがありました。
帯には「現代ノルウェー文学の金字塔的作品」とありました。おそらくノルウェー文学を読むのも初めてだと思います。
調べてみるとエスペダルの作風とも言えるようですが、しばしば哲学的で、明確な道筋を示すというより、読者を考えさせ、問いを投げかけるようなものが多いようです。実際に読んでいても、小説というよりは内省的なエッセイのように感じました。そのため、話の内容が明確に説明されるわけではなく、まるで五里霧中をさまよい歩くような感覚を覚えました。
この「歩く」ということと「考える」ということ、そして「書く」ということのバランスの良さを感じることができました。実際にこの文章の内容は歩きながら考えました。歩くのは一定のリズムで踏み出していきますので、このテンポの良さは考えるときにも心地が良いのかもしれません。できればすべてのアイデアを残しておくのが良いのかもしれませんが、自由に思考を巡らせて残ったもののアイデアを膨らませるというのがちょうどいいように感じています。
おそらくこの本を読んで感じたことは一般的にビジネス書を読んだときと同じだと思います。違うのはそれが作品として具体例を通して感じることができたことだと思います。哲学散歩という言葉もあるように、歩くことと考えることを結びつけてくれる一冊だと思いました。
印象に残った一節を紹介します。
歩くのが楽になればなるほど、無意味な思考にはまりやすくなる。思考は軽くなっていき、心配ごとや深刻な思考から抜け出し、この旅が終わったら何をしようか、どこに暮らし、何を書こうなどともはや考えなくなった。私達が前に進めば進むほど、思考は反対方向に進み、過去へどんどん遡っていくのだった。
トマス・エスペダル『歩くこと、または飼いならされずに詩的な人生を生きる術』(河出書房新社)(p240)
この本を通じて、私は改めて『歩くこと』がただの移動手段ではなく、思考を深め、創造力を広げるための有効な手段であることに気づきました。歩くことで、私たちは心を解放し、考えを整理し、そして詩的な人生を送るための一歩を踏み出せるのかもしれません。この本は、そんな可能性を示してくれます。