今回ご紹介する本は、紗倉まなさんの『うつせみ』(講談社)です。
2024年12月に開催された向坂くじらさんとのトークショーイベントをきっかけに購入しました。
美容整形を繰り返す祖母とグラビアアイドルとして活動する辰子を中心に物語が進んでいきます。
他にも登場人物はからんでいきますが、一番のテーマは外見の美しさについてなのかなと思いました。
最近の言葉で言えばルッキズムについてということになります。
私は美容整形に対して肯定的でも否定的でもありません。
それをしているからどうこうという印象を受けることはありません。
逆に自分がしてみようという発想を持ったこともありません。
人をどこでみているかを問われると第一印象は間違いなく顔だと思います。
だからと言って、その第一印象がよかったら良い付き合いが続いていくことではないです。
顔よりも表情であり、その表情をつくるのは振る舞いや性格だと思います。
外見が美しいというのはあくまできっかけでしかありません。
辰子はグラビアアイドルとして活動するなかで色々な人と接します。
ファンと呼ばれる人との対応もそうですし、その美貌により公共の交通機関での視線が気になることもあります。
もっと綺麗に見られたいという選択肢をかなえる方法として美容整形が挙げられるのは悪いことではないと思います。
むしろ見られることを仕事にするなら自然かもしれません。
辰子の祖母は美容整形を繰り返しています。
辰子の母はそれに対して否定的な立場をとっています。
辰子が中学生のときに祖母と小旅行をするくだりがありました。
祖母がいたというかつての街並みが変化していることに気づきました。
でも、日々生活をしていくうえで周りを変えたいと思っても変えられることってそうそうないものです。
世界を変えようと思ったら自分自身が変わることで世界の見え方を変えていくという選択肢があります。
祖母にとっての美容整形はその手段のひとつでもあったのだと感じました。
印象に残ったところを紹介します。
「どの場所に行っても自分は変わらないから、だから自分を変えることを考える方が楽しいのかもしれないわね」
紗倉まな『うつせみ』(講談社)(p84)
先述した小旅行で祖母が発したものです。
外見を考えていくなかで他の登場人物の視点も考えながら読みました。
タイトルである「うつせみ」に関する言及はなかったように思います。
もしかしたら外見ばかり気にするのは実体のない抜け殻に意識をするようなものであるのかなと思いました。