今回ご紹介する本は、向坂くじらさんの『ことぱの観察』(NHK出版)です。
YouTube「本チャンネル」でこちらの本を紹介されているのを見て興味を持ち、購入しました。
サイトに特に記載はなかったのですが、「本チャンネル」の運営元であるバリューブックスで購入したところサイン本が届きました。
著者の向坂くじらさんは詩人であり、国語教室を運営されています。
また小説デビュー作『いなくなくならなくならないで』が芥川賞の候補にもなりました。
本書でまず気になるのがおそらくタイトルの「ことぱ」の「ぱ」だと思います。
向坂さんが運営する塾も「国語教室ことぱ舎」と「ぱ」です。
これに関しては、ぱ行の言葉がもつかわいい音であることを理由の多くとして語っていました。
意味がないことにも人を油断させる要因があると考えられています。
確かにぱ行を発音するには一度口を閉じてから一気に開ける感じがなんとも言えないかわいらしさがありますね。
中身に関して、本書はあらゆる言葉に対してこういう意味と考えられるのではないかと定義をしていきます。
それは辞書的な意味というよりも実生活を通して考えられるものを書いていますので、タイトル通り観察の結果となります。
まえがきで、定義の「定義」をするところから始まります。
考察の過程ももちろん書かれていますので、納得するものばかりでした。
また、詩人でもありますのでそれらの言葉の定義の最後に詩が掲載されています。
エッセイだけでなく詩でも表現することで、言葉を多面的に捉えているという印象を受けました。
同じ言葉を使っていてもそのニュアンスが異なるということは多々あります。
日常生活で使うことが多い言葉のほうがその傾向が強いように私は感じました。
その言葉を使うときの細かいニュアンスの違いで生まれてしまう衝突もきっとあるのではないかと思います。
言葉の使い方というのはその人の価値観が現れるポイントだと思います。
仲を深めていきたい人がいたら、その人がその言葉をどのように捉えてどう使っているかを観察することが大切だと思います。
それと同時に自分がその言葉を世間一般の認識と違った感覚で使っているものがあるかもしれないと感じることも大切です。
これはこういうものだと自分で定義をしたからこれからずっと変えてはいけないわけではありません。
本書のなかでも途中で定義したものを考え直しているところがありました。
今、一人暮らしをしている立場と実家で4人過ごしていたときとは家族の捉え方は異なります。
また、テクノロジーの進化で私たちの生活はどんどん変わっていきます。
そのなかで一度しっくりくる表現があったとしても、どんどん変化させていってもいいのだと思います。
何か一つの言葉を定義づけようとするとそこに登場する言葉についても考えなければいけません。
そういう意味でも自分の変化を柔軟に受け入れる心構えが大切だと感じました。
本書で定義をしているのは身近で使われるものばかりです。
だからこそちょっとしたニュアンスの違いがあることでコミュニケーションがうまくいかないことにつながるのだと思います。
繰り返しにはなりますが、言葉というのはその人の価値観が表れます。
単なるひとつの言葉として片付けるのではなく、観察をして定義としてはどうなるのか考えるくらい深掘りしてみると面白いかもしれません。
私は周りの人よりも本を読んできたという認識があります。
それ自体を良いことだとか素晴らしいことだとかは思っていません。
結果的には自分にとって良かったことだと思っています。
言葉を通して考えを深めることの大切さを本から学びました。
辞書的な意味だけでなく、自分にとってしっくりくる意味をこれからも考えていきたいです。















