今回ご紹介する本は、リチャード・J・ジョンソン(中里京子訳)『肥満の科学』(NHK出版)です。
天狼院書店の「インフィニティ∞リーディング」をきっかけに読みました。
健康に関わる分野は仕事に直結するため、興味深く読み進めることができました。
著者のリチャード・J・ジョンソン氏は、アメリカの医学研究者です。
体重の増減はエネルギーの収支で決まります。
消費カロリーが摂取カロリーを上回れば体重は減少し、下回れば増加します。
水分摂取によって一時的に変動することはありますが、体を構成する要素には影響しないため、そこまで気にする必要はありません。
ただ、このカロリー収支だけでは説明できないことがあるとわかってきました。
私たちの体の内部では、いったい何が起こっているのでしょうか?
そこでキーワードとなるのが「サバイバル・スイッチ」です。
果糖(フルクトース)の過剰摂取は、かつてジャングルを駆け巡っていた頃の飢餓状態を思い出すかのように、脂肪を蓄えるよう体に働きかけます。
これを著者は「サバイバル・スイッチ」と名付けました。
一種の生理的な反応であり、現代の生活ではこのスイッチが「オン」のままになりやすいとのことです。
また、食べたものだけでなく、自分の体内でも果糖が生み出されるという記述には驚きました。
体重減少のためには、単にカロリーを制限するよりも、空腹感を減らすことで自然と摂取エネルギーを抑えるほうがよいそうです。
また、肥満状態では脱水が起こりやすいため、しっかりと水分を摂る必要もあります。
では、肥満解消にはどのような運動が効果的なのでしょうか?
本書では、有酸素運動の優位性が書かれていました。
ただし、その目的は単にカロリー消費を増やすことではなく、エネルギーを消費する工場であるミトコンドリアを活性化させることにあります。
高強度インターバルトレーニング(HIIT)も効果的ですが、肥満体質の人にとっては心臓への負担が大きくなる可能性があるため、その点には注意が必要だと感じました。
ボリュームのある一冊でしたが、最後まで興味深く読むことができました。
果糖の過剰摂取が肥満の原因となり、そこからさまざまな疾患へとつながることを改めて認識しました。