『残月記』で読み解く近未来ディストピア

今回ご紹介するのは、小田雅久仁さんの『残月記』(双葉文庫)です。

天狼院書店では「秘本」というサービスが展開されており、推薦文のみでタイトルと著者名を伏せた本が販売されています。

購入者は他言無用ですが、店主の三浦崇典さんが文庫の解説を執筆することで、秘本が開帳されました。

 

本作は3篇の物語が収録されており、吉川英治文学新人賞と日本SF大賞のダブル受賞を果たしています。

いずれの作品も月をモチーフにしており、そのうち約半分を占める表題作『残月記』は特に印象深い作品でした。

物語の舞台は近未来の日本です。

西日本大震災が起こり、月昂(げっこう)という感染症が蔓延し、独裁政権が支配する世界が描かれています。

主人公の青年も月昂患者であり、死と向き合いながら生きています。

見せ物としての剣闘士として試合に挑む彼が、愛する人のために何ができるのかを模索する姿は、心に強く訴えかけるものでした。

また、コロナ禍と重ね合わせて読むと、さらに深い意味を感じさせられます。

ディストピア小説でありながらも、希望を感じさせる結末が、私には非常に好印象でした。

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