長島有里枝『背中の記憶』(講談社文庫)

今回紹介する本は、長島有里枝さんの『背中の記憶』(講談社文庫)です。

第26回講談社エッセイ賞受賞作です。

ワタナベアニさんの『カメラは、撮る人を写しているんだ。』(ダイヤモンド社)の編集をされた今野さんがXでこちらの本を紹介していたのに興味を持ち購入しました。

 

著者の長島さんは写真家です。

写真の作品を見たことはなかったのでぜひそちらも見てみたいと思いました。

 

編集者の今野さんは解像度の高い文章というならこの本を読んでから、という旨の投稿をされていました。

主に長島さんの幼少期の思い出や家族とのことが書かれています。

ひとつひとつのエピソードがとても鮮明でした。

写真というのはある出来事の一瞬を切り取るものだと思っています。

そのように思い出が一瞬に切り取られているような印象を受けました。

写真を撮るというのはいろいろな角度から物事を見てそれを最善の形で切り取ることができたものを世に出すことなのかなと思いました。

 

小さな頃の記憶というものはとてもインパクトがあります。

おそらくちょっとした出来事というものは小さな頃の方が記憶しているなんてこともあるかもしれません。

ただ、それを書こうとするとなんだか話を盛ってしまったり、美化してしまったりするような気がするのです。

写真に映ったものをあるがままに説明するというのは案外むずかしいものなのかもしれません。

 

これからできることとすれば、あるがままを見つめて吸収することなのだと思います。

写真家の幡野広志さんは撮る際のポイントとして「見たものを撮りなさい」とおっしゃっています。

見たものというものは自分が興味を惹かれたものということです。

それを続けていくことで自分が何に興味関心を持っているか気づくことができると思っています。

撮った写真を見られるように加工するのはまた別の段階の話です。

まずは対象を中心に据えて見る構えが必要です。

 

これは本に関しても同じことが言えます。

本の世界にはあらゆる文学賞が乱立しています。

きっと賞という冠をつけることによる販促という側面もあるのでしょう。

そうでなくてもあの人が紹介しているから読もうと思うことがあると思います。

本の世界にもインフルエンサーとして振る舞う方もいらっしゃいます。

もちろんそれらを否定することはしません。

でも大事にしたいのは、それを読みたいと思ったのかどうかということです。

誰かが紹介したことを読む理由にすると面白くないと感じたときに言い訳にできてしまいます。

それはとてももったいないことです。

 

誰がどの媒体が紹介していようと、自分が読みたいと思ったかどうかを判断の基準にしています。

今回は編集者の今野さんが紹介されていました。

今野さんは写真の本を編集されていました。

その方が写真家さんのエッセイを紹介されているということで興味を持ち、読みたいと思いました。

 

読みたいと思った本を手に取るというのは、見たものを中心に据えて写真を撮ることに似ているのかもしれません。

そして対象をしっかりと観察することが文章の解像度にもつながっていくと感じました。

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