今回ご紹介する本は、水野敬也さんと 岸田奈美さんの『すべての悩みは武器になる 水野敬也と岸田奈美のLOVE相談』(ほぼ日)です。
「聴くほぼ日」のコンテンツとして1年間半放送されたポッドキャスト番組を元に制作された一冊です。
水野敬也さんはエンタメ自己啓発書として知られる『夢をかなえるゾウ』の著者です。
自己啓発書にありがちな押し付けがましいところがなく、実践をしていくことでより自分の成長に繋げていけることを感じさせられました。
特に最初の課題である「靴を磨く」は仕事道具を大切にする姿勢や小さなことから始めることの大切さを示唆していると思います。
岸田奈美さんは私と同い年の作家さんで、NHKでテレビドラマ化された『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』をはじめとするエッセイで知られています。
面白い文章ですが、決して真似はできない文体だと思っています。
頑張れば近づけるといったレベルのものではありません。
投手で言うとナックルボーラーみたいなものだと思っています。
当然ながら文章を書くことを主戦場とされているお二人ですが、話がとても面白いです。
そもそも文章が面白いということはそれを支える思考が面白いということです。
それを発話しているので面白くないわけがありません。
ただ、話をしていることをそのまま文字起こしをして面白いかは別の話です。
その場の空気感や省略によって失われてしまう部分もあるかと思います。
何気なく使われている言葉に関しては注釈もありましたので、話しているなかでのテンションの上がり具合も伝わってくるような対談本となっています。
水野さんは『LOVE理論』という書籍も出しているように、あらゆるものを理論としてネーミングしています。
ご自身の飼っているポメラニアンがトリミングで毛を刈られると、シュンとしたように威勢がなくなるのを「ポメラニアン丸刈り理論」と名付けているのが特に印象的であり、ツボでした。
岸田さんは弟さんがダウン症であり、中学生の時にお父様を急逝され、その後の苦労でお母様が車椅子ユーザーになるという環境で過ごされています。
恋愛に限らずですが、環境を嘆くだけでなくどう過ごすかが大事なことをユーモアを交えながら教えてくれます。
相談事というとどうしても抽象化されてふわっとした回答になりがちです。
岸田さんは過去に付き合っていた人の名前まで出して回答されているので、不思議な説得力があるなと感じました。
相談事というのは相談をする時点で相談者の胸の内の答えはある程度決まっているということを聞いたことがあります。
選択肢で迷ったときはどちらかが正解なのではなく、案外どちらを選んでも変わらないのかもしれません。
それよりも選んだ道を正しいと思い、正解にしていく努力が大切なのだと思います。
タイトルは『すべての悩みは武器になる』です。生きていると悩みは尽きないものです。
悩んでいるから成長できるし、先に進むことができるのだと思います。
悩む時点で前に進もうとしているのだと私は思いました。
お二人のトークやテンションはエンタメのように感じるところもあるかと思います。
それでも質問者は至って真面目なところがあり、そのギャップがなんだか面白いです。
質問を決して茶化しているわけではなく、回答も論理が飛躍しているように見えるところもあります。
相談をしても最終的には自分ごとに落とし込むことが大切だと思いますので、「案外」と言っては失礼ですが的を射ているのではないかと思います。
どんな人に相談しようと結局どうするかは自分次第なのかもしれないなと思いました。














