今回ご紹介するのは、宮下奈都さんの『神さまたちの遊ぶ庭』(光文社)です。
2026年9月に開催した第14回課題本読書会をきっかけに手に取りました。宮下さんの作品はこれまでに『羊と鋼の森』(文藝春秋)を本屋大賞を受賞した時期に読みました。エッセイ『はじめからその話をすればよかった』 (実業之日本社)も読んだことがあります。
宮下さん一家はそれまでに家族旅行で訪れていた北海道に1年間山村留学をすることになります。宮下さんの旦那さんの発案によりトムラウシに住むことになります。子供たちは反対するだろうと思いきや乗り気で受け入れ、話がサクサクと進んでいきます。
○月某日という日記形式でつづられています。1日分は長くありませんので読みやすかったです。この本に流れる空気感がそのまま『羊と鋼の森』にも現れているなと思いました。
文章の中で書かれることを嫌った次男が出した仮名が「漆黒の翼」でした。その呼び名が変わっていく様もおもしろかったです。私も仕事で子供たちと触れ合う機会があります。その時間でも子供ならではの感性を感じると面白いなと思います。
宮下さん自身のことについて書かれているところも印象的でした。乗り物でのめまいなどがたびたび起こっていたのがパニック障害だとわかり、安心をしたという話がありました。私もそうですが、病気や障害だとわかることは決してマイナスではないと思います。そうとわかることで治療を進めることができますし、対処を考えることもできます。病気とも障害とも言えない状態の方が案外厄介なのかもしれません。
この本で書かれなかったことも当然あり、気になるポイントでもありました。一番はトムラウシに行くことを決めた旦那さんが何の仕事をしていたかということです。本の内容に直接関わることではないのでなんだったんだろうくらいではあります。
山村留学という少ない人数のコミュニティだったので人間関係も良好だったことが伺えます。北海道で1年間を過ごしたということでおそらく本書を手に取る道民の多くは宮下さんのことを身近に感じると思います。ただ北海道のすべての地域が道外からの人を温かく迎えるとは限らないのではないかという懸念のようなものがあります。北海道の人が本州のことを「内地」と呼ぶことがあることに私は違和感があります。明治時代ならまだしも今の時代になって「内地から来た人」と呼び、捉えるのはなんだかモヤモヤとした感覚があります。ひとつの島となっているところで独自の感覚みたいなものは今でもあるのかもしれません。
私は小説家さんのエッセイを読むのが好きです。それを読むと作品への味わい方も変わってきます。どちらが先でも大丈夫なので、『羊と鋼の森』と合わせてぜひ読んでみてください。















