今回ご紹介する本は、三宅香帆さんの『「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか』(新潮新書)です。
三宅さんは文芸評論家として活動されています。
書籍の帯での推薦コメントで見かけたことがある方も多いのではないかと思います。
全てではありませんが比較的好んで手に取っています。
タイトルは『「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか』です。
第一部では物語を味わう段階で知っておきたい5つの視点について書かれています。
その基本は、<比較>、<抽象>、<発見>の3つです。
さらに応用として、<流行>と<不易>を加えての5つとなります。
第二部では実際にこれらの視点を踏まえて三宅さんの実際の書評や作品のレビューを読むことができます。
5つの視点をどう身につけていくかについてはそこまで詳しくは書かれていません。
野菜を切るのに包丁を与えられて、切った後の完成形を見せてもらっている感じかなと思いました。
これは技術を知ったうえでのトレーニングという要素が大きいのかもしれません。
なので言語化する技術に関しては三宅さんも他で本を書かれていますのでそちらを参考にするのが良いと思います。
ということで、この本のメインは三宅さんの書評を楽しむというところにあります。
三宅さんはこの本の出版のことをSNSで投稿したところ、「そもそもこの著者の話が面白くない」というクソリプがきたことを話していました。
面白いの定義は人それぞれだと思います。
私にとって三宅さんの書評は少なくとも大爆笑をする文章ではありません。
どちらかというと「鋭い」という言葉がぴったりなんじゃないかと思います。
同じ作品を味わったはずなのにその視点があったのかと気付かされることが多々あります。
私は『国宝』を映画でも原作でも味わいました。
あとがきにこの5つの視点で『国宝』を読み解いていましたので映画を見た方はぜひ確認していただきたいです。
調理の仕方を知ることは大事です。
しかしいつもこの5つの視点を意識しなければいけないわけではありません。
場面に合わせて使い分けていくことが大切です。
続けていくうちに自分が得意とするパターンが見つかっていくものだと思います。
この本のなかで“何をどう読んでいるのか”の「何を」の部分には特に触れられていなかったように思います。
もしかしたら私の見落としかもしれません。
語りやすいコンテンツとそうでないものがあるのは確かだと思います。
物語は抽象的なものを扱うものが少なくありません。
感想にしやすいものが良い作品とは限りません。
自分が興味を持った分野から広げていくことが大切だと感じています。
なので、興味を持つ気持ちがあれば「何を」読んでもいいと思います。
繰り返しになりますが、技術の身につけ方に関しては訓練をしていくしかありません。
本を読む際に頭の片隅に置いておくとより立体的に本を味わうことができそうです。










