人間の感情はグラデーション

2026年7月6日に円錐書店で開催をした課題本読書会では三浦綾子さんの『氷点』を扱いました。三浦綾子さんの作品はこれまでに『塩狩峠』を読んだだけでした。北海道を代表する作家であり、また有名な作品を手に取る機会になってよかったです。

病院を経営する男の娘が誘拐され殺されてしまう痛ましい事件から話が始まります。そのときに妻は別の男と密会をしていた様子がありました。それに対する復讐心とキリスト教思想である「汝の敵を愛せよ」という教えから犯人の娘を養子に迎えることとします。一見すると平和な家庭のように見えながら、噂をされたり、妻にその出自が明らかになるにつれ態度が変わっていきます。

この作品のテーマのひとつが「原罪」となっています。聖書の教えも多くあるので、馴染みがないところもありました。養子となった子は当然ながら犯人の子とは知らずに健気にまっすぐに育っていきます。しかし、妻はその出自が明らかになるにつれ、まるで昼ドラのような悪事をはたらいていきます。

私が読んで思ったのはあらゆる人物において人間の感情は白黒はっきりつけられるものではないということです。愛情を持って育てていた子の親が大切にしていた娘を殺していたと知るとそれまで通りとはいかないでしょうし、自分の気持ちというものは揺れ動くものです。

言葉にしなくてもわかるつながりというものがあります。それでも言葉にしていたら起こさなくても済んだ誤解というものがあると感じました。男は妻の情事を疑いましたが、それを聞くことができていれば話は違う方向に進んでいたかもしれません。でも、自分が同じような立場にあったときにそうできるかどうかはなってみないとわからないことかなと思いました。

以前、『塩狩峠』を読んだときもキリスト教の考えが多く取り入れられているなと感じました。これまでそういう小説を読んでこなかったので感じるところがありました。また作中で引用とされている言葉の引用元が不明、もしくはこの作品しかないものがあったので、そういう使い方をする作家さんなのかなと思いました。

また、登場人物の気持ちが(括弧)で表されているのもなかなか見かけない形式でした。

昭和57年から読み継がれるベストセラーということですが、読んでいて古さを感じるところがありませんでした。それは人間の本質という普遍的なテーマを扱っているからなのだと思いました。

ラストを知り、『続 氷点』も読もうと思いました。

読書会情報

読書会の情報は お知らせ をご覧ください。

募集の案内はLINEでも行っています。

月初に読書会情報を配信しています。

申し込みはLINEからお待ちしています。



LINEの友だち検索「@pgc8174h」でも出てきます。

LINE オープンチャットへのご参加はこちらからどうぞ!

ポッドキャストでも本の紹介をしています

書いている人


第13回 課題本読書会 三浦綾子『氷点』開催報告

言葉にすることで人生を豊かに

関連記事

  1. 「事実と真実」と「愛」

    今回ご紹介する本は、凪良ゆうさんの『流浪の月』(東京創元社)です。202…

  2. 川村元気『億男』を読んで、お金と幸せについて考え…

    第68回「本の話をしよう」で紹介した一冊は、川村元気さんの『億男』です。…

  3. 科学×人間ドラマの温かな融合〜伊与原新『藍を継ぐ…

    今回ご紹介する本は、伊与原新さんの『藍を継ぐ海』(新潮社)です。天狼院書…

  4. それだけのことが特別になる

    今回ご紹介する本は、恩田陸さんの『夜のピクニック』(新潮文庫)です。Yo…

  5. 「本来のその人」とは誰なのか

    今回ご紹介するのは、村上春樹さんの『夏帆 The Tale of KAHO』…

  6. 故郷とはそこにあるもの

    こんにちは、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)です。「…

  7. 過去の自分に声をかけるとしたら

    今回紹介する本は、東野圭吾さんの『クスノキの女神』(実業之日本社)です。…

  8. 吉田修一『横道世之介』(文春文庫)

    こんにちは、井田祥吾(@shogogo0301)です。読書セラピストとし…

PAGE TOP