今回ご紹介するのは、松浦弥太郎さんの『自分の足音を聞きながら』(マガジンハウス)です。
松浦弥太郎さんは、私が尊敬している方の一人です。これまでにも著作を何冊も読んできました。読書会でも紹介してきましたし、このブログにも感想文を残しています。松浦さんの言葉には、はっとさせられる発見があります。その言葉は一時的な流行に左右されるものではなく、時代が変わっても残っていく普遍的なもののように感じています。
今回の本を読んで改めて考えたのが、「普通」や「常識」とは何なのだろうということでした。
世の中の大多数の人がそうしていることを「普通」と呼ぶのであれば、そこから外れることは必ずしも間違いではありません。むしろ、周囲がそうしているからという理由だけで受け入れるのではなく、自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分なりに確かめることが大切なのだと思います。自分の生き方に不安を感じるとき、つい「正解」を探してしまいます。みんなはどうしているのか、これが普通なのか、自分は間違っていないのか。そんなことを考えているうちに、自分が本当はどうしたいのかが分からなくなってしまうこともあります。
けれども、自分が何かを感じたのであれば、そこには何かしらの理由があるはずです。もちろん、人としての道を外れることはいけません。それでも、自分の気持ちにまで嘘をついて、世間一般の「普通」に合わせる必要はないのではないかと思いました。
そのことを特に身近に感じたのが、「自分の機嫌について」という章です。私は気分に波を感じることが多く、それによって大切な人に素っ気ない態度をとってしまい、後から反省することがあります。自分の機嫌が悪いときには、「どうにかして直さなければ」と思ってしまいます。しかし、機嫌というものは、必ずしも無理に治すものではないのかもしれません。何か特別なきっかけがなくても、時間が経てば自然と回復することがあります。そう考えると、機嫌の悪い自分を責め続けるよりも、静かに過ごして回復を待つことも一つの方法なのだと思いました。私の場合、そういうときに一番大切にしたいのは読書です。コーヒーを飲みながら本を読み、家でのんびり過ごす。どこかに出かけて気分転換をするよりも、そうした静かな時間のほうが自分には合っているのだと思います。
こうしたことを考えていると、松浦さんの「ていねいな暮らし」というものも、単に生活の一つひとつを丁寧に行うという意味だけではないのではないかと思えてきます。目の前にある出来事や、自分の感じたことを雑に扱わないこと、自分の気持ちに耳を傾け、言葉にしながら考えてみること、そして、世間の「普通」ではなく、自分自身で確かめながら生きていくことが大切なのだと思います。
松浦さんも、言葉を通して思考を深めていく方なのだと思います。私自身も言葉で考えることが好きなので、だからこそ松浦さんの文章に惹かれるのかもしれません。自分の足元ばかりを見ていると、周囲と同じ場所を歩いているのか、正しい道を進んでいるのかが気になってしまいます。ときには周囲ではなく、自分自身の足音を聞いてみるように、自分は何を感じているのか、何を大切にしたいのかを確かめながら歩いていくことが大切だと感じました
自分の生き方に不安になっている方や、「正解」や「普通」という言葉にどこか違和感を持っている方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。周囲に合わせるためではなく、自分の人生を自分で歩いていくための、小さな気づきを与えてくれる本だと思います。















