50歳を迎える人生の節目に備えるための一冊、松浦弥太郎さんの『50歳からはこんなふうに』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をご紹介します。32歳の私にとって、この本は未来を見据えた準備として、とても刺激的な内容でした。松浦弥太郎さんの著作は好んで読んでいます。松浦弥太郎さんはエッセイストであり、2005年から9年間『暮しの手帖』の編集長を勤めたことでもよく知られています。
50歳をセカンド・バースデーと節目と考え、そこからの生き方・考え方についての先輩からのアドバイスという印象を受けました。私は現在32歳なので、50歳を迎えるのは18年後です。その頃には今と環境は大きく変化しているはずなのでまた違ったことを考える必要はありそうです。それでも今後どのような心構えで過ごしていけばいいのかという視点はとても参考になりました。
松浦さんは『暮しの手帖』編集長を退任後、ITを学ぶためにクックパッドに入社されました。テクノロジーを一から学び、今ではAIに作業を任せる部分もあるようです。これに関して、松浦さんはアナログを大切にするイメージがあったので意外な感じもしました。しかし、本業であるエッセイといった機敏な心の変化を記録するにはやはり自分の手でしかできないことなのかなと思いました。
「移動の距離は感動の量を増やす」(p76)というエッセイがあります。私は札幌在住なので参加できるイベントには当然限りがあります。コロナ禍でオンラインイベントも多くなりましたが、全てが全てオンライン配信というわけではありません。大都市の家賃が高いのはイベントへのアクセスのしやすさという意見を聞いたことがありますがその通りだと思います。ただここぞというときは飛行機に乗ってどこにでも行こうという気持ちはあります。飛行機に乗ってまで行きたいイベントはそれだけ熱が入るので集中力がすさまじいものになっている感覚があります。近場のイベントでもオンラインと対面があったら迷わず会場参加を選ぶようにしています。実際にその場に足を運ばなければ得られない感覚というのが必ずあると信じています。松浦さんが強調する『移動の距離は感動の量を増やす』という考え方は、私自身がより積極的に新しい経験に飛び込む勇気を持つことにつながりました。
印象に残った一節を紹介します。
本はやさしい対話相手です。ページをめくる手を止めて、しばらくもの思いにふけったとしても、僕を急かさず無言で待ってくれます。
松浦弥太郎『50歳からはこんなふうに』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)(p109)
「セルフケアとしての読書」からの引用です。本を読むというのは自分自身との対話でもあります。速く読むことが求められがちですが、じっくり考えるきっかけづくりであるならば焦らずに自分と向き合うためのセルフケアとして捉えるのがいいのではないかと思いました。
この本は、50歳を迎える方にとってはもちろん、未来を見据えて心構えを整えたい全ての世代にとって有益な一冊です。今を大切にしながら、未来への準備を整えてみてはいかがでしょうか?