今回ご紹介するのは、マーカス・デュ・ソートイさんの『世界のエリートが学んでいる数学的思考法』(SBクリエイティブ)です。
高校時代、数学の先生が「数学は論理的思考力を養う学問です。論理的に物事を考えられていないと言われるのは悔しくありませんか」と話していたことを覚えています。数学といえば難しい公式を覚えて、そこに数字を当てはめて答えを出すものという印象がある方もいらっしゃるかと思います。数学の本質はそこではないということです。円周率が3か3.14で計算したかが大切なのではなく、それが直径と円周の比であるということを知っていなければ意味がありません。この本には数式が一切出てきません。気楽に読むことができ、また、数学とは何なのかを考える機会になりました。
この本を読んで特に印象に残ったのは、私たちの直感が必ずしも現実を正しく捉えているとは限らないということです。
「なんとなくこうだろう」と感じることは、日常生活でも仕事でもたくさんあります。しかし、直感だけではなく、数字や数学を使って確かめてみることで、物事を別の角度から見ることができます。私自身、仕事では数字を日々追いかけています。資料には前年比やパーセントで示されているものも多く、数字そのものを見る機会は少なくありません。ただ、数字を見ることと、数字を読み解くことは同じではありません。前年比が何パーセント変化したのか。その数字はどのくらい大きな変化なのか。そもそも何を基準に比較しているのか。そうしたことを考えるには、単純な計算だけではなく、統計などの知識も必要になってきます。
この本を読んで、数学的思考を身につけることができれば、仕事で目にする資料も今より深く読めるのではないかと思いました。
そして、ここでいう数学は、難しい公式を暗記することとは少し違います。もちろん計算する能力も大切です。ただ、単に計算をするのであれば、それは算数の領域ともいえます。数学には、物事を整理し、筋道を立て、なぜそう言えるのかを考えるという側面があります。
そう考えると、高校時代に数学を学んだ意味も少し違って見えてきます。
数学で習ったことが、そのまま高校生の日常生活で役立ったかと聞かれると、正直なところ、そう感じる場面はあまりありませんでした。けれども、そこで論理的に考える力が育まれていたとすれば、それは社会人になってから別の形で役立つのかもしれません。
今回この本を読んだことで、高校時代に学んだ数学をもう一度学び直してみるのも面白そうだと思うようになりました。
ただし、昔の教科書を引っ張り出して高校数学を最初から復習したいというわけではありません。今の仕事で実際に数字を扱っているからこそ、統計など、仕事に直結しそうなところから学んでみたいと思っています。
私にとって数学的思考とは、根拠を示すための説得力として使えるものです。
自分が「こうだと思う」という感覚だけではなく、「なぜそう考えるのか」を数字や論理によって示すことができれば、自分自身の判断を見直すことにもつながりますし、誰かに説明するときの説得力にもなります。
本書には数式が一切出てこないため、学生時代に数学アレルギーがあった人でも比較的気軽に読むことができると思います。一方で、すでに数学的思考についてある程度理解している人にとっては、少し物足りなく感じる部分もあるかもしれません。だからこそ、この本は数学を深く学ぶための教科書というよりも、「数学的に考える」ということに興味を持つための入り口として読むと面白いのではないでしょうか。
私自身、この本を読み終えて、数学を「もう終わった高校時代の勉強」としてではなく、これからの仕事や生活にも活かせるものとして見直してみたくなりました。















