今回ご紹介するのは、けらえいこさんの『あたしンち SUPER③』(朝日新聞出版)です。
わたしが初めて『あたしンち』に出会ったのはテレビアニメ化された頃で、もう20年近くが経ちましたが、みかんや弟のユズヒコ、父と母の4人家族・タチバナ家が織り成す日常を描いたこの作品には、いつも心が温かくなるものがあります。一度は朝日新聞の連載終了とともに幕を閉じたものの、現在は『AREA』での再連載がスタートし、また彼らに会える喜びをかみしめています。
登場キャラクターたちは年を取らないままですが、物語の舞台はしっかり令和にアップデートされていて、前作まではコロナ禍の影響でマスクをつける姿も見られました。そして今回の『SUPER③』では、まさに「アフターコロナ」と言える今の空気感が映し出されています。
印象に残ったエピソードを一つご紹介します。
#15では「青木まりこ現象」がテーマとなっていました。本屋に入ると便意を催すというユニークな現象で、インクの匂いが原因とも言われています。ちなみにこの名前は、雑誌に「本屋に行くとトイレに行きたくなる」という投稿をした青木まりこさんが由来だそうです。物語では、みかんが「自分の場合は本屋ではなく、布地屋で布を選んでいるときに催す」とユーモラスな論を繰り広げ、「好きなものに反応して興奮すると腸が刺激される」という独自の理論を展開していました。真偽のほどはともかく、思わず笑ってしまいました。
また、『あたしンち』について、作家の角田光代さんは「心の実家」と評していますが、まさにその通りだと思います。時代が移り変わっても、どこかホッと落ち着くこの作品は、今後も私にとって大切な存在であり続けることでしょう。これからの展開も楽しみです。