今回ご紹介する本は、河合隼雄さんの『大人の友情』(朝日文庫)です。
本屋さんを立ち読みしていたところで発見しました。
どこかでカバーを見たことがあるような気がしたのですが、自宅にはない本だと思ったので購入をしました。
あとでブログを検索すると以前お借りした本であることがわかりました。
なので再読の一冊となります。
著者の河合隼雄氏は日本におけるユング派分析心理学の第一人者として知られています。
「心」について考えてみたくなったときに手にすることが多いです。
今作のテーマはタイトルにもあるように「友情」です。
学生時代はそれこそ友情を育むような友人がいました。
休みの日に遊びに出かけたり、一緒に過ごしたりというような友人がいました。
ふと冷静になると社会人になってからそのような過ごし方をできる人は本当に数えるくらいなのだなと思いました。
SNSが近況報告のようになり、繋がっている人はいますが、学生時代とは違った感覚です。
テクノロジーの発達もあれば、行っている仕事やその休みによって友人関係というものは大きく変わっていきます。
私は本を読むのが好きなので一人の時間が長くても苦にしないタイプの人間です。
むしろ人と会う時間が長くなってしまって自分の時間が少なくなってしまうとそれがストレスと感じてしまうかもしれません。
かといって孤独を好むからと言って孤立を目指しているかというと決してそのようなことはありません。
では私がどのような友人関係を理想としているのかを考えると、161頁に「茶呑み友だち」という表現がありました。
高齢になって性関係を伴わない夫婦関係を表すこともあるそうですが、茶を飲んで語り合うような友人関係のことを指します。
静かであり、深い感情の結びつきが感じられる素敵な関係性だと思います。
河合隼雄氏がユング派の分析家、アドルフ・グッゲンビュール氏の講義を聞いていたとき、アドルフ氏の祖父は友情についてこう言っていたそうです。
(前略)
友人とは、「夜中の十二時に、自動車のトランクに死体をいれて持ってきて、どうしようかと言ったとき、黙って話に乗ってくれる人だ」と答えた、
(後略)
河合隼雄『大人の友情』(朝日文庫)(p15)
ここまでの状況になることはないと思いますが、この黙って話に乗ることができるのは信頼関係があってこそのものだと思います。
これからも歳を重ねれば人間関係は変わっていきます。
私は読書会の活動を通して多くの方と交流が持てるのを本当に楽しく感じています。
これからも読友さんとしてどうぞよろしくお願いします。