今回紹介する本は、石井勲氏の『はじめて読む人の「大学」講座』(致知出版社)です。
このブログでも取り上げている『致知』という雑誌があります。
正確にいえば『致知』を課題本にした読書会である木鶏会です。
35歳以下の若手で構成されている若獅子の会に参加をしています。
地域ごとに開催されており、私は北海道致知若獅子の会に参加をしています。
その会の初めに参加者全員で「大学」の素読を行っています。
素読というのは漢文の書き下し文のまま読んでいくものです。
そこで取り上げられている「大学」の解説本が出版されましたので手に取りました。
松下政経塾で行われた『大学』の講義録がもとになっているとのことでした。
松下政経塾といえば松下電器(現・Panasonic)の創業者である松下幸之助氏が創った人材養成機関です。
政界を中心に多くの方が活躍されています。
松下電器の後継者育成のために松下商学院を設立する際の安岡正篤氏のアドバイスが「古典を原典で教える」ということであったそうです。
ちなみに安岡正篤氏は戦後歴代の首相の相談役として支えた人物とされています。
まだ読めていないので手に取りたいです。
私は毎日素読を行なっています。
漢文の心地よいリズムに心がシャキッとする気分になります。
まずは続けることが大切だと思っています。
頭で考えるよりも体で覚えていく感覚です。
そうすると今回解説を読んでスッと心に響くものを感じました。
『大学』の冒頭は三綱領と呼ばれています。
明徳を明らかにするに在り。
民を親たにするに在り。
至善に止まるに在り。
石井勲『はじめて読む人の「大学」講座』(致知出版社)(p25)
の三つです。
徳に磨きをかけ自分を向上させること。
磨かれた自分が政治をすることで周りも良くなっていく。
理想の段階に達しても歩みを進めていくこと、が大切だということです。
そのためにはどうしていくべきかが書かれています。
若獅子の会で素読をするのは冒頭の三綱領八条目と呼ばれる部分です。
ちなみにこの八条目に格物致知があり、『致知』の由来となっています。
後半は具体例です。
他の文献から紹介されています。
素読をしていても私が好きな部分はこちらです。
湯の盤の銘に曰わく、苟に日に新たに日日に新たに、又日に新たならんと。
石井勲『はじめて読む人の「大学」講座』(致知出版社)(p54)
「湯」は王の名前です。
「盤」は今でいう顔を洗うたらいのことであり、「銘」は金属に彫られていた文字のことです。
それを踏まえると、解説はこちらです。
昨日の自分であってはならない。昨日よりも一歩前進した自分であるかどうかということを、顔を洗うたびに反省していたわけです。
石井勲『はじめて読む人の「大学」講座』(致知出版社)(p55)
ここの部分は書き下しで読むと特にリズムもよく、そういう意味だったのかという発見もあり、とても気に入りました。
また石井氏は漢字教育も行なっていたというところが随所で見られました。
漢字には意味が込められています。
点一個の意味を考えることが漢字を使う民族として考えていかなければいけないことのように思いました。
現在は『大学』と『論語』の素読を行なっています。
『孟子』『中庸』を加えた四書にいずれ挑戦したいです。