与えられた情報を超えるのが魅力的なミステリ

今回ご紹介するのは、伊坂幸太郎『さよならジャバウォック』(双葉社)です。

伊坂幸太郎さんの小説を好んで読んでいます。
第1回目の読書会では、『終末のフール』(集英社)を紹介しました。

ミステリとして一級品の数々です。
それ以上にハッとする哲学的な言葉に出合えるのが魅力でもあります。

ただ、すべての作品が同じくらいの印象の強さを受けるかというとそういうわけではありません。
伝統芸のような伏線回収に圧倒されることもあれば、何が書かれていたか理解に及ばないことも正直あります。
なので読んだことがない作品を手に取るたびに今回はどっちなのだろうというワクワク感があります。

夫を殺害してしまった妻の語りから物語が始まります。
この頃の高圧的な態度なDVの様な言動に不信感を抱き、それが積もった結果の行動でした。
息子が帰ってくる前に遺体をどうしようかを思案していたところに、大学時代の後輩が部屋にやってきて始末を試みます。
その後輩は、殺してしまった夫は「ジャバウォック」に取り憑かれていたのではないかと推測します。
ジャバウォックとは、脳の前頭葉に張り付いて、機能を奪ってしまうというものです。
前頭葉の機能が意思決定なので正常な判断ができなくなってしまうということです。

妻の視点と別の登場人物の視点が入れ替わり書かれるところは伊坂作品によく見られる構造です。

私はミステリを読んでいるときに書かれている正解を探そうとしないようにしています。
邪推をすることなく、書かれている通りに理解をして読むようにしています。
ただ、結論として解決のためのピースが与えられていなかったとするとそれはモヤっとしてしまいます。
結末が与えられたものから導くことができる余地があったのにたどり着けなかったときにこのミステリはおもしろいとなります。

今回の作品ではキーとなるのはタイトルにもなっている「ジャバウォック」です。
これについて理解を深めていたつもりでした。
それでもなるほどと思う結末で大満足の一冊でした。

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