今回ご紹介するのは、井上慎平さんの『弱さ考』(ダイヤモンド社)です。
私は、担当編集の今野さんの𝕏をフォローしています。
そこで「“防具”となるビジネス書を作りました」と本書を紹介されているのを目にしました。
私たちは、資本主義経済のなかで生きています。
多くの会社という組織は、成長や発展を目指すように設計されています。
私自身も、その仕組みの中で働いていることを、ふとしたときに自覚させられます。
たとえば、アルバイトから社員へと転換する試験を受ける際、「今後のキャリアプラン」について尋ねられました。
試験を受けようと思った理由はたしかにありましたが、特別に強い成長意欲があったわけではありません。
かといって、「現状維持が目標です」と答えたところで、印象がいいわけではないこともわかっていました。
そのとき私は、「今の自分が進むべきステップとして、社員への転換を選んだ」と伝えました。
おそらく私の心のどこかに、「成長しなければならない」「上を目指すべきだ」という前提に対する違和感があったのだと思います。
だからこそ、波にのまれないように自分を守るための方法を知っておくことが大切なのです。
著者の井上慎平さんは、NewsPicksパブリッシングの創刊編集長として、多忙な日々を過ごされてきました。
その日々を「毎日が学校祭の準備のようだった」と振り返っておられます。
過度な頑張りから体調を崩し、休職と復職を繰り返すようになった結果、双極性障害Ⅱ型と診断され、現在もその病と付き合いながら生活をされています。
私もまた、双極性障害を抱えています。
私の場合は、症状が悪化すると入院が必要になるレベルであり、Ⅰ型と診断されています。
それでも、基本的な治療方針や考え方には大きな違いはないと感じています。
資本主義的な生き方とは、「未来から逆算して今を生きる」ようなスタイルです。
しかし、常に成長や発展を目指し続ける生き方は、次から次へと目標が出てくる終わりなきマラソンのようなもの。
永遠にゴールに到達できない可能性もはらんでいます。
そこで、本書で紹介されている「“よりよい明日”を目指さない」という考え方を取り入れてみたいと思いました。
未来に成功することを目的とするのではなく、成功を目指して悪戦苦闘するそのプロセス自体を目的とする
井上慎平『弱さ考』(ダイヤモンド社)(p295)
この考え方でも、たしかに目標は必要ですが、どこに重きを置くかによって日々の過ごし方は大きく変わってくるように思います。
ただ前だけを見て突き進むことも時には必要です。
けれど同時に、一歩引いて、自分を俯瞰的に観察しながら過ごすことも、とても大切なことだと感じました。