今回ご紹介する本は、池谷裕二さんの『生成AIと脳 この二つのコラボで人生が変わる』(扶桑社新書)です。
天狼院書店が実施するインフィニティ∞リーディングの課題本として読了しました。
本書では、ChatGPTをはじめとする生成AI技術を今後どのように活用すべきかが論じられています。
著者の池谷裕二氏は東京大学薬学部の教授であり、神経生理学を専門とされています。
私自身、使いこなせているか自信はないものの、仕事でもプライベートでもChatGPTを活用しています。
特に、フォーマルな文章の添削においては非常に役立っています。
また、何か調べ物をする際、ウェブページを探して読むよりも、追加で質問できる点が大変便利だと感じています。
生成AI技術を利用するには、『プロンプト』と呼ばれる指示文を作成する必要があります。
もし期待通りの回答が得られない場合は、そのプロンプトがうまく機能していないと考えられます。
技術の発展により、言葉を使わなくても済むようになるわけではなく、正確な指示を伝える文章力がますます求められるでしょう。
その一例として、「役割を与える」という手法が挙げられます。
たとえば、ただ「翻訳して」と指示するのではなく、「中学生に向けて」といった具体的な条件を付加することで、ターゲットが明確になり、より精度の高い回答が得られるとのことでした。
これに関して天狼院書店の三浦さんはその必要性はなくなっていくとおっしゃっていました。
より人間とやり取りしていく感覚に近くなっていくとのことです。
確かに会話をするときにわざわざ「あなたが翻訳家で〜」と付け加えることはないですよね。
また、一見、人間が優位に思われる分野でも、実際にはAIが優れているケースが多いようです。
その中で、人間にしかできないことや人間らしさを追求する必要があります。
これは、できることから見出すのではなく、無意識に自然とできることの中にあるのではないかと感じます。
この考え方は、個々の得意な資質を明らかにする『ストレングスファインダー』に近いものがあります。
囲碁や将棋において、AIが人間を凌駕するようになったとしても、人間同士の対局の魅力が失われることはありません。
むしろ、人間らしいドラマに価値が見出されるのかもしれません。
また、論語には「知好楽」という言葉があります。
これは、「知る者は好む者に及ばず、好む者は楽しむ者に及ばない」という意味です。
楽しむ才能こそが人間らしさであり、やる必要のない作業や苦痛を感じる業務は、積極的にAIに委ねるべきだと考えます。
新しい技術に対して慎重な姿勢を持つ方も多いでしょう。
しかし、ゼロから構築することが必ずしも最良とは限らず、目的と手段を踏まえて使い分けることが大切です。
誤字や脱字のチェックといった作業は、生成AI技術の得意分野です。
ただし、文章全体を完全にAIに委ねるかどうかは個人の判断に委ねられます。
私自身も試みた経験がありますが、望んでいた結果ではなかったため、断念しました。
今後、さらに状況は大きく変化していくでしょう。
まだ触れたことがない方は、気軽な利用から始めてみることをお勧めします。