今回ご紹介するのは、東野圭吾さんの『永遠の記憶』(文藝春秋)です。
最近、東野圭吾さんの訃報に触れ、大きな驚きがありました。長年多くの読者を楽しませてきた東野圭吾さんの作品に、今回も触れることができたことをうれしく思います。
本作は「ガリレオシリーズ」の一冊です。東野圭吾さんの作品はシリーズものであっても、どの作品から読んでも楽しむことができるのが特徴のひとつです。ガリレオシリーズでは専門的な科学知識を扱いながらも、物語としての面白さがあり、一冊ごとに完成されたミステリーとして読むことができます。映像化ではガリレオ先生こと湯川学を福山雅治さんが演じられています。
今作、『永遠の記憶』については、これまで順番に読み続けてきたからこそ味わえる感動がある作品だと感じました。
特に印象的だったのは、過去の作品とのつながりです。今作を十分に楽しみたい方はガリレオシリーズを順番に読んでほしいです。小説では伏線回収という言葉がよく使われます。この作品で長い時間をかけて張られていた伏線が回収される瞬間には、鳥肌が立つような驚きがありました。それは単なるミステリーの仕掛けとしての伏線回収ではありません。読者自身がこれまで読んできた時間までもが、物語の一部になっているように感じました。ずっと読んできた読者の対するメッセージのようなものを私は感じました。
シリーズを通して登場人物たちも歳を重ねています。特に湯川学という人物の変化は、ガリレオシリーズを読む楽しみのひとつでした。初期の湯川は、天才的な頭脳を持つ一方で、周囲からは変人とも見られるような人物でした。しかし、シリーズが進むにつれて、人間らしい感情や他者への思いやりが見えるようになっていきます。草薙との関係性の変化も、その象徴だと思います。大学での付き合いから、事件解決のために協力するようになり、長い年月をともに過ごしてきた信頼関係へと円熟していく様子がありました。合理性を重視する湯川でありながら、人の情や心の動きを大切にしていることが伝わってきます。
東野圭吾さんの魅力は、圧倒的な読みやすさにもあります。読んでいて文章につまずくことがほとんどなく、自然と物語の世界へ入り込むことができます。しかし、読みやすいからといって内容が軽いわけではありません。そこには緻密に計算されたストーリーがあります。読者を驚かせるミステリーのトリックだけではなく、人間ドラマとして心を動かされる作品や、社会問題について考えさせられる作品も数多くあります。
東野圭吾さんは、ミステリーという形を通して、人間そのものを描き続けてきた作家なのだと思います。『永遠の記憶』が本当に遺作になるのかは、今の時点ではわかりません。もしかしたらまだ遺稿として何か出てくるかもしれません。いつも期待を超え続ける東野圭吾さんの作品に触れることができたことは、読者として幸せなことでした。
『永遠の記憶』は、一つの事件の謎を解くだけではなく、長く東野圭吾作品を味わってきたからこそ得られた読書体験を得ることができました。















