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かつて、テレビゲームに夢中だった頃、特にロールプレイングゲーム(RPG)を好んでいた。ゲームの中の主人公になりきり、仲間と冒険を繰り広げ、アイテムを集め、敵を倒し、次々と広がる物語の世界を進んでいく。その中で「攻略本」が不可欠な存在だったことを覚えている。攻略本はいつもすぐ横に置いて、どの武器を装備すれば有利か、どの技を覚えれば勝ちやすくなるかを調べながらプレイしていた。旅の途中で仲間が増えたり、未知のモンスターと出会ったりするのも、攻略本を見ながらであれば「準備」ができる。やり直しがきくゲームではあっても、無駄な行動を減らし、効率よく進められるのが「攻略本」のおかげだった。
今のようにネットにアクセスできる環境ではなく、攻略情報といえば紙の本しかなかった。だから、ゲームが発売されて少し時期が経つと発売される攻略本は、新しい「知識の宝庫」であり、すぐに手に入れたい情報源だった。そこにはフィールドマップや迷宮の地図、アイテムや武器のデータ、さらにはボスキャラを倒すために推奨されるレベルや戦略がぎっしり詰まっている。迷うことなく最短ルートを進めるし、必要なレベルも目安がつくから、戦闘も比較的安心して挑める。攻略本を見ながらゲームを進めるのは一種の確認作業にすぎないかもしれないが、そこには独特の達成感があった。攻略本があるからこそ、挫折しにくく、最後までプレイを楽しむことができたように思う。
そんなゲームに夢中になっていた日々からいつしか離れたが、今でもあの「攻略本」の存在は何かと心に残っている。あるとき、ふと思ったのだが、攻略本はゲームだけのものではなく、世の中のあらゆる本が、実は何かしらの「攻略本」ではないかと考えるようになった。ゲームの攻略本がそのゲームの進め方を教えてくれるように、世の中の本はそれぞれの分野における「生き方」や「攻略法」を教えてくれるものではないか。例えば、料理のレシピ本。おいしく料理を作るために必要な手順が詳細に書かれている。使う材料や順序、火加減や味つけのコツが示されているから、誰でもおいしい料理をつくる方法がわかる。これは「料理という分野における攻略本」と言えるだろう。
他にも、ビジネス書や自己啓発本は、仕事や人生を効率よく、かつ豊かにするための知恵や方法が満載だ。ビジネスの効率を上げるための知識や考え方がまとめられているから、現場で活かせる「仕事攻略本」となる。また、たとえば小説は、登場人物の心の葛藤や成長が丁寧に描かれていて、人間の繊細な感情を学ぶ助けになる。小説を通して他人の心の動きを理解すれば、日常生活でも他者への理解が深まり、対人関係がより良好なものになるかもしれない。こうして考えると、どのジャンルであっても、本はそのテーマに沿った「攻略法」を教えてくれるような存在であり、それが人生のどこかで役に立つ可能性がある。
ただし、ここでゲームと現実の決定的な違いを考える必要がある。それは、ゲームにはリセットボタンがあるが、現実の人生にはやり直しがきかないことだ。ゲームなら、ボスキャラに負けそうになれば一旦リセットして、再び万全の状態で挑むことができる。だが、現実では失敗やミスをしてもその瞬間にやり直すことは不可能だ。たとえば、仕事で重要なプレゼンをしている最中に思うようにいかない場面に直面したとしても、会場にいる全員の記憶を消して、プレゼンをやり直すことはできない。さらに、ゲームとは違い、本に書かれた「攻略法」をそのまま実践しても、必ずしも想定通りの結果が得られるとは限らない。特に対人関係においては、自分の行動に対する他者の反応が予測しづらく、成功パターンを一度実行したからといって、また同じ結果が得られるとは限らないからだ。
しかし、私はそれでも本を読む価値があると思っている。ゲームの攻略本のように、すべての本が現実に直接的な解決策を提供するわけではないが、確かに人生における指針やヒントを与えてくれる。今まで読んできた本の内容が、さまざまな場面で自分の選択や行動を支えてくれたことを感じることが多々ある。仕事で悩んだときに励ましをくれた自己啓発本、料理に挑戦する勇気をくれたレシピ本、そして小説の中の登場人物が人生をかけて試行錯誤している様子が、まるで自分のことのように感じられて心に残った。これらは、現実の生活で「攻略本」として役立ってきた。
だから、これからも本は私にとって大切な「人生の攻略本」であり続けるだろう。たとえゲームのようにシンプルでわかりやすい「答え」が書かれていなくても、いつかどこかで、それが生きるためのヒントになる。読んだ本のすべてが即座に役立つわけではないかもしれないが、少しずつ自分の知識や考え方の土台となり、いざというときに何らかの形で背中を押してくれるだろう。だから私は、これからも本を「攻略本」として傍らに置き続け、人生の中でそのヒントを見つけながら生きていきたいと思う。