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こんにちは、読書セラピストの井田祥吾(@shogogo0301)です。
「本を語る、人と繋がる」をテーマに、札幌ゼロ読書会の運営をしています。また、ブログやSNS、ポッドキャストを通じて、本の魅力と読書の素晴らしさを広く発信しています。
今回ご紹介するのは、、朱和之(著)、中村加代子(訳)の『南光』(春秋社)です。この本は、東京神田の神保町にある中国・アジア専門書店である内山書店で購入しました。内山書店では御書印をいただきました。
春秋社で創刊されたアジア文芸ライブラリーシリーズのうちの一冊です。
著者の朱和之さんは台湾出身の作家で、台湾の写真家である南光(鄧騰煇)をモデルにしてこの作品を書き上げました。南光が文章を残さなかったため、この物語は著者の想像を基にしていますが、歴史的背景を巧みに織り交ぜたリアリティのある描写が印象的です。
物語は、台湾が日本に統治されていた時代が舞台です。日清戦争後の講和条約で台湾が日本に割譲され、その時代を生きた南光の姿が描かれています。私は歴史に対して苦手意識がありましたが、本書は写真家としての南光に焦点を当てているため、非常に興味深く読み進めることができました。
法政大学のカメラ部で南光はライカと出会いました。ライカはドイツ製のカメラで、今も多くのファンに愛され続けています。
写真を通じて表現することについて、本書を読む中で深く考えさせられました。かつては絵が主な記録手段でしたが、カメラの登場により写真がその役割を担うようになりました。それでも、絵画の魅力が失われることはなく、むしろその独自性がより際立つようになっています。近年ではAIによる画像生成も可能になり、今後は「人間にしかできない表現」がますます重要になっていくと感じています。幡野広志さんが語る「ヘタだけど良い写真」という言葉も、この文脈で理解できるように思います。
特に印象に残った一節を紹介します。
写真と呼ばれるものは、平たく押し潰され、生命を失った記憶や夢の標本のようなものであり、写真家はその採集者なのだと。良い写真を撮ろうと思うなら、まず先に人びとの生き生きとした夢を捉える必要があるのだ。
朱和之『南光』(春秋社)(p55)
この言葉から、写真は単に姿を記録するだけでなく、被写体の理解と敬意が不可欠であることを学びました。写真家にとってコミュニケーションが大切であることを再確認しました。本書は、戦中戦後の激動の時代を背景に、写真家として生きた一人の人間の物語です。歴史に苦手意識がある方でも楽しめる作品であり、特に写真や表現活動に携わる方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。